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「きゃあああああーーーーーーー!!」「わああーーーー!?」
男の耳にまず入ったのは、人間の悲鳴であった。
だがそんなものはどうでもいい。
男の目は――空からこちらに向かって堕ちてくる車の群れを捉えていた。
まるで狙いすましたかのように、車の群れは〝弓〟を構える男へと落下してくる。
このままでは当然、男は圧し潰され、車の爆発で木っ端みじんになるだろう。
しかし男は逃げない。
〝弓〟を構えたまま、車の群れの中心部を目で見極め……、
ビュオッ!!
右手につがえた赤光を放つ。
その光は、目にとらえられない光の速さをもって一台の車を消し飛ばし、さらにその破壊的速度は、まわりの車を破壊しながら散り散りに吹き飛ばした。
ゴゴゴゴゴゴ……
都市がうなりをあげる。ビルが震える。
矢が放たれた際に生じた熱風は、周囲の人々をなぎ倒し、街灯をも風圧で押し倒す。
すさまじい衝撃であるが……それは単に、彼が光の矢を放ったことによって生じた、ただのそよ風に過ぎない。
矢が直撃し消し飛んだ車のように、分子すら残さず粉々になるよりは笑って許せる弊害であろう。
しかし……、
「……」
男は弓を下ろして、ゆっくりと肩越しに背後を見やる。
さきほど、自らが注視していた……『人間』の女がいた場所を。
そこに、女はいた。
明滅する街灯の光のなかに、まるでスポットライトを浴びるように――転がっていた。
頭に鉄の破片が突き刺さった……死体として。
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