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「……」
男は、光のなかに佇む。
弓で光をつがえ、金色の髪を輝かせ、青い瞳で荒れ果てた周囲を見渡す。
――いるはずだ。俺を、狙っているはずだ。光のなかで。なぜなら……お前は俺の〝力〟が欲しいはずだから。いや、違うな。お前は俺を……吸収したいはずだから。
男は、どこかにいるはずの敵対者へと心の中で問う。その問いに答えるものなどいないが、たとえ応えなくても男には分かっている。
自分を襲ってきた者が誰で、どんな〝力〟を持つ者なのかなど、分かって当たり前だ――なぜなら。
「俺は――『予言者』なんだから」
この男――アポロンの先に、一人の男が見えた。
たった今起きた惨劇。さらには『消失病』を恐れて光を求めて慌てふためく哀れな民衆のなか、その光り輝く男は立っていた。
まるで、身体自体から光が発せられているように、男の身体を光が包み込んでいた。
だがそれ以外。
その姿かたち、容貌も……『アポロン』と同じであった。
アポロンとまったく同じ姿をしたこの男もまた、アポロンをにらみ返している。
まるで、鏡のように。
アポロンは弓を構え、光矢を群衆の向こうの〝敵対者〟へと向ける。
「――会いたかったぜ。『太陽神』さんよ」
まるで示し合わせたように〝敵対者〟ヘリオスもまた、武器を構える。
それは機械の〝棒〟のようでもあり……〝杖〟のようでもあった。
予言者と太陽神。
性質は違えど……同じ姿、同じ顔をした『神』が向き合う。
ここは、『消失病』という謎の怪異に苛まれる都市――『オリュンポス』。
暗黒を拒絶するためにまばゆく輝く都市のなかで、ふたりの『神』の〝存在〟を賭けた戦いが始まる。
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