第一話:光無き世界

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「……」  男は、光のなかに佇む。  弓で光をつがえ、金色の髪を輝かせ、青い瞳で荒れ果てた周囲を見渡す。  ――いるはずだ。俺を、狙っているはずだ。光のなかで。なぜなら……お前は俺の〝力〟が欲しいはずだから。いや、違うな。お前は俺を……したいはずだから。  男は、どこかにいるはずの敵対者へと心の中で問う。その問いに答えるものなどいないが、たとえ応えなくても男には分かっている。  自分を襲ってきた者が誰で、どんな〝力〟を持つ者なのかなど、分かって当たり前だ――なぜなら。 「俺は――『予言者(アポロン)』なんだから」  この男――アポロンの先に、一人の男が見えた。  たった今起きた惨劇。さらには『消失病』を恐れて光を求めて慌てふためく哀れな民衆のなか、その男は立っていた。  まるで、身体自体から光が発せられているように、男の身体を光が包み込んでいた。  だがそれ以外。  その姿かたち、容貌も……『アポロン』と同じであった。  アポロンとまったく同じ姿をしたこの男もまた、アポロンをにらみ返している。  まるで、鏡のように。  アポロンは弓を構え、光矢を群衆の向こうの〝敵対者〟へと向ける。 「――会いたかったぜ。『太陽神(ヘリオス)』さんよ」  まるで示し合わせたように〝敵対者〟ヘリオスもまた、武器を構える。  それは機械の〝棒〟のようでもあり……〝杖〟のようでもあった。    予言者と太陽神。  性質は違えど……同じ姿、同じ顔をした『神』が向き合う。    ここは、『消失病』という謎の怪異に苛まれる都市――『オリュンポス』。  暗黒を拒絶するためにまばゆく輝く都市のなかで、ふたりの『神』の〝存在〟を賭けた戦いが始まる。  
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