プロローグ:予言者の独り言

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プロローグ:予言者の独り言

『二コラ・テスラ』って知ってるか?  ……あぁ、知ってるか。ん? 知らないやつもいるらしいな。  こいつそんなメジャーじゃないのか? 『エジソン』に知名度で負けてるやつ? 発明品がなんだかよくわかんないやつ?    ……まぁ、有名だけどなんか色々と不憫なヤツではあるんだな。俺もよく知らないけど。  でも、〝天才〟ではあるんだよな?  いろんな発明をしてるけど、ソイツが生きていた時代の発明にしては未来的だったり、君らが使ってる〝スマートフォン〟の発明をしていたり、君らの時代の、なんかすごい組織の〝エフビーアイ〟ってとこが「二コラ・テスラは宇宙人だ」って声明を出してるんだろ?  まぁ、君らにとっちゃ二コラ・テスラは〝過去〟の人間であるからして、その真偽を確かめようがないわな。  まして、〝もっと過去〟に生きてる俺からの「二コラ・テスラってどんな奴?」って質問には、もっと答えられないし。時間や距離的な意味でもね。  だから、俺なりに二コラ・テスラってのがどういうヤツかって印象を勝手に語らせてもらうけど……未来を見通し、現在を未来へと繋げようとした存在。それが二コラ・テスラだって印象を俺は受けたね。  そう、未来だ。運命って言い換えてもいいな。  絶対に訪れる、不可避の現象。  二コラ・テスラは、これを予見してる。予見したからこそ、自分が生きていた時代では到底理解も評価もされない偉大な発明をした……まぁ、天才ってのは死後に評価されたりするよね。皮肉なことに。  だから、俺は二コラ・テスラってやつに興味を持った。  同じ、力を持つ者同士、シンパシーを感じてる。  未来を見てしまったことで、進化させようとしたり、あるいは停滞させようとしたり、あるいは破壊しようとしたり……いろんなことで悩まされる境遇の仲間なんじゃないかって。  そう、俺も未来が見えるんだ。  絶対に訪れる、不可避の現象ってやつを。  だけど、二コラ・テスラと俺とじゃ大きな違いがある。    二コラ・テスラは、自分が見た〝美しい未来〟へと世界を繋げるために、〝発明〟という偉大な行為をした。  一方、俺は――自分が見た〝滅びの未来〟から世界を切り離すために、これから〝殺し〟をやる。  な? ぜんぜん違うだろ?  だから俺は二コラ・テスラに興味がある。  俺には、未来へつなぐ偉大な〝発明〟なんてできないから、もし叶うなら会って話をしてみたいなって思ってる。   〝殺して、奪う〟。  それしかできない、ちっぽけな男にどうか助言をってね。  ん? 誰を殺すのかって?  それはね、んー、そうだな。  強いて言えば……。   そいつは、俺と同じ――『神』。  これから俺は、自分自身を殺すのさ。  
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