手と手でおしゃべり

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 あるとき、先生があたしたち3人に声をかけました。 「スズランろう学校の先生に聞いたんだけれど、みおちゃんとお手紙の交換をしてるの?」 「はい!夏休みに、みんなでみおちゃんの世界に遊びに行くんです!」 「そうなんだ。ねえ、もし良かったら、手話を勉強してみない?」 「手話ってなんですか?」 「口じゃなくて、手を使って、おしゃべりをするの。スズランろう学校の先生から、手話の本をもらったから、一緒に勉強してみない?」 「わあ、すてき!先生、教えてください」  手話を覚えれば、もっといっぱい、みおちゃんとおしゃべりができます。あたしは、嬉しくなりました。  あいさつは、人差し指でおじぎをするような動きをします。先生と一緒にやってみました。スズランろう学校のみんなは、手話でおしゃべりをしていたんですね。ほかには、どんな手話があるのかな。  両手の掌をにぎると「お友だち」という意味です。みおちゃんと、あたしはお友だち。みおちゃんのおかげで、マリアーヌちゃんとエアラちゃんともお友だちになれました。お友だちって素敵な言葉。  名前を呼べるように、「指文字」も覚えました。「あいうえお」の1個1個の音に合わせた手の動き。これで、お互いの名前も呼べます。  毎日、手話の練習をしていたら、あっという間に夏休み。ヒマワリの季節になりました。今日は、みおちゃんに会いに行く日です。 「みおちゃん、こんにちは!とっても会いたかったよ」  あたしが手話で、そう言うとみおちゃんはとてもびっくりしていました。 「フローラちゃん、おひさしぶり!手話を覚えてくれたの?」 「うん!みおちゃんといっぱいおしゃべりがしたくて」 「うれしい!フローラちゃん大好き!」  あたしは、普段口でしゃべるのもゆっくりで、手話もゆっくりです。みおちゃんは、あたしに合わせて、ゆっくり手話をしてくれます。 「フローラちゃん、私の名前を呼んでくれてありがとう。呼びやすいように、私のサインネームを教えるね」  「サインネーム」というものがあるそうです。指文字で「み」「お」と表現するんじゃなくて、1個のハンドサインで「みおちゃん」に呼びかけることができるそうです。みおちゃんは、あたしたち3人のサインネームも一緒に考えてくれました。  みおちゃんとは、いっぱいおしゃべりができました。 「この間ね、雲の上の世界と交流会があったの。みんなふわふわ浮いてて、とっても楽しかったの」 「わあ、素敵!毎日楽しそうだね」 「うん!とっても楽しいよ。みおちゃんは、毎日楽しい?」 「うん!楽しいよ。音が聞こえないと、不便なことも多いけど、スズランろう学校のお友だちと遊んだり、こうやってフローラちゃんたちが会いに来てくれたり、世界には楽しいことがいっぱい!いつか、フローラちゃんの世界にも遊びに行きたいな!」  みおちゃんの家のお庭には、ヒマワリが4輪咲いていました。背の高さも、お花の大きさもばらばらです。花びらの黄色も、よく見るとちょっとずつ色の濃さが違います。でも、仲良く真夏の太陽に笑顔を向けていました。  交流会でいろんな世界があることを知りました。お魚さんの世界で、お魚さんはすごーく速く泳いでいて、鬼ごっこでは絶対に勝てません。ロボットさんたちみたいに難しい計算をしたり難しい言葉を使ったりはできません。  同じ世界に生きていても、絵が得意な人、苦手な人がいます。おしゃべりが大好きで早口な子も、あたしみたいにおしゃべりが苦手で話すのがゆっくりな子もいます。運動が得意な子、苦手な子。音が聞こえる子、聞こえない子。背が高い子、背が低い子。  みんな、違うけど、お友だちになりたいって気持ちがあれば、お友だちになれるんですね。
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