音色から始まる泡沫の夢

ふたり

女は顔を赤くして横を向く。
「…っ…そんなことは…あなたの音色に比べたら」

誤魔化すように手に持っていたお酒を一気に飲み干す。
お酒が一気に流れていくのを感じながら
『ククッ…そうかい』
と素っ気なく返す。

「あの…どうして…私を？」

『ああ…一回くらい近くで見ても悪くねぇと思ってなぁ』

これで最後にしなければ
自分と関わって傷つくのは…
自分と関わったこと気づかれたら追われるのは…
それだけは…

「私も近くで見てみたいと思ってました」

少し照れた顔で言われて､心の奥がざわつく。