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今日は月どころか空さえ見えないぐらいに雨が降り続いていた。
『嫌な、天気だ』
こういう時にあの事を思い出す
そんな気持ちを消すように三味線を手に持つ。
『今日は来ねぇだろうなぁ』
そう言いつつ、三味線を弾きながら外を見つめる。
見つめていると、いつの間にかアイツがいて、こちらを見つめていた。
ふと目があってしまい、慌てて反らすものの柄もなく驚いてしまう。
そのまま驚いていると、微笑んでお辞儀をしているのが見える。
おもわず手を滑らせてしまって鈍い音が響く。
だが、すぐに音を奏でて誤魔化す。
気がつくと、アイツは帰ったのか居なくなっていた。
自分の馬鹿げさに笑う。
痛みを感じて指を見る。
そこから血が流れていて三味線を汚していた。
『はっ…どうやら俺もヤキが回ったようだな』
そう言って血が滲んだ指を加えて、また笑った。
『だが、そんな日も悪くねぇかもな』
加えたまま雨が降り続く空を見つめた。
ああ…夜が待ち遠しいねぇ
明日は星空の下で会いたいものだ
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