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あの日から、なぜかアイツのことしか目が映らなくなってしまっていた。
だが、ある目的のためには…
目的のためには全てを忘れてしまわければ、この身を燃やすように生きていかなければいけない
解ってるが…忘れようとするたびに思い出して忘れさせてくれない
『一度だけでいい。近くで見てみたいものだなぁ』
独り言を言うが、誰も聞くことなく流れて行く。
それを消すように、カンと煙管をぶつけて灰を落とす。
会ってしまえば、会えなくなってしまうのに
危険なことに巻き込まれてしまうのに
『はっ…らしくねぇ』
また三味線に手を伸ばす。
その瞬間に落としてしまい、鈍い音が響く。
ため息をついて外を見上げると、雲が広がり始めていた。
『今日は空を見てても面白くなさそうだなぁ』
そう言いつつも三味線を拾うときに、よく見ると怪我した指からまた血が滲んでいた。
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