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執事と坊ちゃん
受けは獣人ばかりの家系に、突如生まれた人間のΩ。
人間は獣人に見下され、Ωは卑しい存在だとされている。
そのため受けは家族から嫌われていたが、家長であった祖父だけは受けを可愛いがってくれた。
祖父は不憫な受けを守ってくれるようにと、狼で優秀な攻め(α)を専属執事にした。
受けは悲しいことがある度、もふもふの攻めに抱きしめてもらっていた。
受けはその度に攻めに「大好き」と伝えていたが、攻めには「〇〇様のことは手のかかる弟みたいに思っています」と言われ、その度にショックを受ける。
受けは叶わぬ恋の話を、幼馴染によく聞いてもらっていた。
受けが18歳になった時、可愛がってくれていた祖父が死んでしまう。その頃より、家での居場所がなくなり、受けを家の恥だと思っている父親は、勝手に受けと幼馴染の婚約を決めてしまう。
受けはそんな結婚嫌だったが、父親のいうことは絶対で言い返せない。
幼馴染は受けが攻めのことを好きなことを知っていたので「こんなことになってしまって、すまない。こんな俺だけど結婚してくれないか?」と幼馴染は悪くないのに謝りプロポーズしたてくれた。
父親の言いつけは絶対だが、どうしても攻めへの想いを断ち切ることはできない。受けは攻めの気持ちが知りたくて勇気を振り絞り「僕が結婚したら寂しい?」と訊く。すると攻めは「彼なら○○様を必ず幸せにしてくださります」とだけ答えた。
受けはそれが攻めの答えだと思い、幼馴染のプロポーズを受け、結婚する。
結婚式が終わり新居の寝室で初夜を迎えようとした時、優しかった幼馴染の態度が豹変。
「お前の家の名前と財力が欲しかっただけで結婚した。子どもは作るが、そのほかは俺に構うな。それに子どもができるまで番にはならない」と言い、受けにヒート促進剤を飲ませ乱暴に抱き、行為が終わると幼馴染であった夫は愛人のところに行ってしまった。
身も心もボロボロになった受け。でもそこには、いつも受けを優しく受け止め、助けてくれる攻めはいない。受けは一人、耐えるしかなかった。
夫は全く帰って来ず、帰ってきたと思えば促進剤を飲ませ乱暴に抱く。妊娠していないことがわかると「この役立たずが」と、受けに暴行する。
受けは見えないところに、無数のアザができるが、誰にも相談できずにいた。
そんな日々に耐えていると、攻めと妹が婚約したと耳に入り、受けはこれでもう本当に攻めとは一緒にいることも、会うこともできないと心が締めつけられ号泣。
それでも攻めが幸せになるならと、攻めへの気持ちに完全に蓋をした。
数日後、受けは実家に呼び出される。行くと母親に「夫が愛人のところに入り浸っているという噂は本当なの?」と訊かれる。受けが頷くと「結婚早々愛人をつくられるなんて、お前はどこまで出来損ないなんだ」と罵られる。
もう立ち直れないほど、心身ともに傷ついた受けが帰ろうとした時、攻めが受けを見つけて駆け寄ってくる。
攻めは受けの変わりように驚き理由を訊くが、受けは「何もない」と言い、その場から立ち去ろうとする。攻めは引き留めようと受けの腕を掴んだ時、腕にアザがあることに気付く。
理由を訊くが受けは黙りこくったままだったので、攻めは受けを屋敷に連れて行き、部屋の中で「見せて欲しい」と優しく言った。受けが袖を捲し上げると、無数のアザが攻めの目に飛び込んできた。攻めの中で怒りが込み上げてくるが、ぐっと抑え、優しく受けに何があったのか訊く。
受けは今までのことを、攻めのことが好きなこと以外全部話す。
攻めは「私がなんとかします。だから今日はここにいてください」と、受けを家に帰さなかった。
翌日、優しいフリをした夫が受けを迎えにくる。
攻めが受けの家族も集め、みんなの前で受けにできたアザのことを言うと、夫は「受けはよく転ぶから、アザはその時のだよ。そうだよな」と受けに同意を求める。
受けは怯えて何も言えない。
夫は震える受けの手をとり連れて帰ろうとすると、攻めが受けの屋敷で働く使用人の女を連れてきて真実を話させた。
夫は「でたらめだ」というが、受けは勇気を振り絞って「全部本当です!」と、上半身の服を脱ぎアザを見せる。
明らかに転んでできたアザではないと全員わかり、夫は即離縁され、受けは屋敷に戻ってきた。
夫から解放され、嬉しいはずの受けだが、心の傷は消えない。部屋で一人ぽつりといると攻めがお茶を淹れてやってくる。
受けは攻めに「結婚式はいつ?」と訊くと「結婚は白紙に戻りました」と返ってきた。
驚いた受けは理由を訊くと、受けの妹には恋人がいたが、身分違いだったため秘密にしていた。そんな時、父親が優秀な攻めとの結婚を押し進めたため、妹は恋人と駆け落ちしたとの事だった。
攻めは「貴方の結婚が決まった時、私も貴方を攫えばよかった」といい、受けの前に跪き「私と一緒に逃げてくれませんか?」と手を差し出す。
受けは嬉し涙を堪えながら、攻めの手を取り頷く。
攻めは受けの手をしっかり握り、屋敷から抜け出す。
2人は宿に泊まりながら、数日かけてある山小屋に行った。
そこは受けの結婚が決まった時、攻めは執事の仕事を辞め移り住もうと用意していた小屋だった。
攻めはその小屋で改めて受けにプロポーズをし、受けは「はい」と返事をした。
攻めは受けが怖がらないように「愛している」と何度も囁きながら優しく抱き、番となった。
そして2人は幸せに暮らしました。
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