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下水管には結局異常はないと言われたのだが、帰り際の業者の顔が気になって、結局その日はマン喫で過ごすことにしたんす。シャワーも使えるところ有るじゃないすか、それに深夜から朝までコースだと値段もお得だし。ちょうど漫画も読みたかったので、都合が良かったす。
結局徹夜しちゃって眠たくなったんで家に帰ることにしたんすよ。でも、入るのを止めたんす。
「えっ、ちょっと意味わからないんだけど・・・・・・どういうこと?」
「すんません。ちょっと言うのが怖くなったって言うか」
「怖いんだ・・・・・・そんな体験したんだ」
「いや、何かの目に遭ったわけじゃないっす。鍵を開けようとしたら・・・・・・声がしたんすよ」
「い"、マジで」
「はい」
「お、女の人の声?」
「はい・・・・・・」
!?
「うわっ!? 何今の、ピシッってあっちの部屋で鳴ったよね?」
「鳴りましたね・・・・・・」
「ちょっと待ってて、見てくる」
「いや、先輩行かないでくださいよ」
「じゃあ、一緒に行こうか」
「はい、そうしてください」
一旦私達は彼の体験談の話を中断すると、この日の取材の為に借りたホテルの寝室の部屋に入ることにした。
「うわっ、何コレ」
「・・・・・・」
「ちょっとホテルの係呼ぼ」
私達が見たそれは窓硝子のヒビだ。此処は地上から33階の場所に有る。ただ硝子にヒビなら私もそこまで慌てては居ないだろう。ヒビはヒビでも、人の手の跡のようなものが見えていた。それだけなら見間違いとか何とか考えることが出来る。けどそこには、彼の話に出て来た髪の毛が付着していたのだ・・・・・・。
「てっちゃんさあ・・・・・・」
「はい」
「もうそのアパートからは出たんだよね?」
「はい、もう出ました」
「それから何も起きて無いんだよね?」
「そうっすね」
「お祓いも当然行ったんだよね?」
「・・・・・・」
「行ったんだよね?」
「・・・・・・」
「まさか行ってないの」
「行ってないっすね」
コンコンッ
コンコンッ
「何っ?」
「誰か来たみたいっすね、俺開けて来ます」
「いや、開けるのやばくない?」
コンコンッ
コンコンッ
「・・・・・・」
「お客様、いらっしゃいませんんでしょうか?」
あっ、さっき窓ガラスがひび割れてるのを見て、フロントに連絡していたのをスッカリ忘れていた。
「窓ガラスの件だ、開けて来て」
「了解っす」
私は同僚に頼まれていた仕事の件が有り、メールをチェックすると電話を掛けることにした。
「お疲れ様です。はい、○○の件で連絡したんですけど、大変申し訳御座いません。海外側の・・・・・・ええ、はい。どうやら何処も半導体の材料が回らないみたいで、本当に申し訳御座いません。ええ、ええ。はい、担当にプッシュさせて頂きます。はい、もちろん優先対応で、はい、それでは失礼します」
電話を切ると私は目の前に影が有るのに気付いた。椅子に座って居たので、顔を上げると対象の顔を捉えることが出来た。
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