4/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 下水管には結局異常はないと言われたのだが、帰り際の業者の顔が気になって、結局その日はマン喫で過ごすことにしたんす。シャワーも使えるところ有るじゃないすか、それに深夜から朝までコースだと値段もお得だし。ちょうど漫画も読みたかったので、都合が良かったす。  結局徹夜しちゃって眠たくなったんで家に帰ることにしたんすよ。でも、入るのを止めたんす。 「えっ、ちょっと意味わからないんだけど・・・・・・どういうこと?」 「すんません。ちょっと言うのが怖くなったって言うか」 「怖いんだ・・・・・・そんな体験したんだ」 「いや、何かの目に遭ったわけじゃないっす。鍵を開けようとしたら・・・・・・声がしたんすよ」 「い"、マジで」 「はい」 「お、女の人の声?」 「はい・・・・・・」  !? 「うわっ!? 何今の、ピシッってあっちの部屋で鳴ったよね?」 「鳴りましたね・・・・・・」 「ちょっと待ってて、見てくる」 「いや、先輩行かないでくださいよ」 「じゃあ、一緒に行こうか」 「はい、そうしてください」  一旦私達は彼の体験談の話を中断すると、この日の取材の為に借りたホテルの寝室の部屋に入ることにした。 「うわっ、何コレ」 「・・・・・・」 「ちょっとホテルの係呼ぼ」  私達が見たそれは窓硝子のヒビだ。此処は地上から33階の場所に有る。ただ硝子にヒビなら私もそこまで慌てては居ないだろう。ヒビはヒビでも、人の手の跡のようなものが見えていた。それだけなら見間違いとか何とか考えることが出来る。けどそこには、彼の話に出て来た髪の毛が付着していたのだ・・・・・・。 「てっちゃんさあ・・・・・・」 「はい」 「もうそのアパートからは出たんだよね?」 「はい、もう出ました」 「それから何も起きて無いんだよね?」 「そうっすね」 「お祓いも当然行ったんだよね?」 「・・・・・・」 「行ったんだよね?」 「・・・・・・」 「まさか行ってないの」 「行ってないっすね」  コンコンッ  コンコンッ 「何っ?」 「誰か来たみたいっすね、俺開けて来ます」 「いや、開けるのやばくない?」  コンコンッ  コンコンッ 「・・・・・・」 「お客様、いらっしゃいませんんでしょうか?」  あっ、さっき窓ガラスがひび割れてるのを見て、フロントに連絡していたのをスッカリ忘れていた。 「窓ガラスの件だ、開けて来て」 「了解っす」  私は同僚に頼まれていた仕事の件が有り、メールをチェックすると電話を掛けることにした。 「お疲れ様です。はい、○○の件で連絡したんですけど、大変申し訳御座いません。海外側の・・・・・・ええ、はい。どうやら何処も半導体の材料が回らないみたいで、本当に申し訳御座いません。ええ、ええ。はい、担当にプッシュさせて頂きます。はい、もちろん優先対応で、はい、それでは失礼します」  電話を切ると私は目の前に影が有るのに気付いた。椅子に座って居たので、顔を上げると対象の顔を捉えることが出来た。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!