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「てっちゃん、どうした? ホテルの人は?」 「居ないっす」 「はっ?」 「ドアを開けたんすけど、誰も居なかったす」 「いやいや、ちょっと。ちゃんと見てないんじゃないの? すれ違いとかさ」 「いやっ、ドアを開けて左右確認したっすけど、誰も居なかったす」  おかしい、この部屋の位置は建物の真ん中に位置している。あんな数秒のやり取りの間に、見失うはずが無い。エレベーターも非常階段もそれぞれ建物の端に近い場所に有る。  じゃあ、さっきドアを叩いたのは一体全体誰だったんだ・・・・・・。  コンコンッ  コンコンッ 「先輩・・・・・・」 「ちょっと、バイヤーな展開的な」  コンコンッ  コンコンッ 「恐れ入ります。お客様、先程の件でフロントより参りました。現在ご都合は宜しかったでしょうか?」 「(声は今度は男人だから大丈夫じゃない)」 「(いや、怖いっすよ)」 「(今度は私が行ってくる)」 「(お願いしますっす)」 「はーい、今行きまーーす」  ドアを開けると普通にホテルのボーイが立っていた。 「遅くなり申し訳御座いません」 「いえいえ」 「それでは早速拝見させて頂きます」 「はい、お願いします」 「コレは酷い。申し訳御座いません。この部屋はガラスが割れると危険になりますので、お詫びとしてラグジュアリークラスの部屋を御用意させて頂きます。お値段はこの部屋のお代で結構で御座います」  怖い思いをしたけど、なんか得をしてしまった。 「それじゃあ、先輩失礼するっす」 「うん、なんかごめんね」 「いえ、こちらこそ。最期までお話出来なくてすいません」 「いやいや、いいよ。アレはマジでやばいもん。これ以上あの話はしない方が良いと思う」 「そうっすね」 「ああ、ちゃんとお寺とか行ってお祓いして貰いなよ」 「はい、今度の週末に行って見るっす」 「それじゃあ気をつけて」 「お疲れ様っす」  そして私は彼と別れたあと、棚ぼたで移った高級なお部屋で優雅に過ごした。寝る時少し怖かったので、電気をつけたまま寝た。  期待している人には悪いが、特に何もなく私は朝を迎える事が出来た。  それから仕事の用事も有り、忙しい毎日が続き、すっぽりとあの出来事のことなど忘れていた。そして一ヶ月が過ぎた頃、私は何気なく開いたパソコンのファイルを見て驚くことになったのだ。  
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