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あの時ホテルで撮影した写真、彼と二人で撮った怪談話の記念に撮影した写真。そこには映ってはいけないもう一人の存在が彼の隣に立っていた。彼女はまるで自分の彼氏のように彼の左手を両手で握っていた。
私はコーヒーを吹くと、慌てて彼にコールした。
「お掛けになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめの上お掛け直しください」
携帯に登録されている番号、掛け間違い等起こる筈もない。私は慌てて彼の友人や知り合い、バイト先へと電話を掛けた。すると妙な答えが返って来た。
「ああ、哲っすか、俺は直接知ってるわけじゃないんすけど、なんか失踪したらしいっすよ。確か二ヶ月くらい前らしいっす」
私は思わず携帯を床に落とした。
「もしもし・・・・・・もしもし・・・・・・」
ツーツーツーツーツーツー
気が付くと私はノートパソコンを開き、あの日録音した彼の語った髪の話を何度も何度も聴き返していた。
そして・・・・・・
「始めていいっすか、これは何か怖い体験ない? って夢七夜先輩に頼まれたんで話すんすけど、正直あるあるかもしんないっす・・・・・・したら・・・・・・髪が有るんすよ」
(あっ、それ私の髪)
「・・・・・・ちょっと待って江藤くん、序の序って・・・・・・まるで始まりみたいに言うけど、それだけで終わらないってこと」
「はい、それだけじゃ終わらないっす。あんなの序章に過ぎないっすから。それより匿名のはずじゃ、名前言わんといて下さいよ」
(へえーー江藤って言うんだフフ)
「あっ、ごめんごめん。まあまあ苗字だけなら特定されないからさ、それより続きは」
(名前分かっちゃった)
「・・・・・・それは言いんすけど、業者が帰り際妙なことを言うんですよ」
「妙なことって、何を言われたの?」
「同棲ですか、羨ましいですねって」
(邪魔だから少し睨んじゃった)
「・・・・・・てっちゃんさあ・・・・・・」
「はい」
「もうそのアパートからは出たんだよね?」
「はい、もう出ました」
(今度のところ割かし綺麗だよね)
「・・・・・・てっちゃん、どうした? ホテルの人は?」
「居ないっす」
「はっ?」
「ドアを開けたんすけど、誰も居なかったす」
(居るよ)
「いやいや、ちょっと。ちゃんと見てないんじゃないの?すれ違いとかさ」
「いやっ、ドアを開けて左右確認したっすけど、誰も居なかったす」
(ちゃんと傍に居るよ)
「・・・・・・それじゃあ、先輩失礼するっす」
「うん、なんかごめんね」
「いえ、こちらこそ。最期までお話出来なくてすいません」
「いやいや、いいよ。アレはマジでやばいもん。これ以上あの話はしない方が良いと思う」
「そうっすね」
「ああ、ちゃんとお寺とか行ってお祓いして貰いなよ」
「はい、今度の週末に行って見るっす」
(ううん、お寺なんかに絶対哲也を行かせない。だって彼は私だけのものだから)
ザーーーーーーーーーー
あれから彼について色々と聞いたりするが、亡くなったと言う話は聞いていない。
でも、私は思うんです。
きっと彼は彼女に何処か私達の知らない世界へと連れて行かれたのだと。
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最期までお読み( . .)"頂き有難うございます!
宜しければ他のホラー作品もお楽しみください。
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