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武田は夕方もカードゲームの大会があるからと言って、足を気にしながらも去っていった。
彼の熱狂は、スマホやゲーム機だけにとどまらない。ゲーセン通いをしながらボードゲーム、トレーディングカードゲームにも手を出す武田のようすは、驚きを通り越して狂気のゲームバカである。
僕はカードショップまで付き合う気にもなれず、そのまま病院で武田と別れた。
「僕もそろそろ帰るか……って、涼し」
顔面に当たったぶわりという感覚に、思わず目を閉じた。目を開けて見ると、中庭側の廊下の窓が開いていて、強い風が僕の顔を撫でたようだった。
「きゃっ」
歩きながらぼんやりとしていた僕のすぐそばで、小さな悲鳴が上がった。
突然目の前で紙の束がバサバサと舞ったかと思えば、すばしっこい影が僕の目の前に現れたのだ。
かと思えば、その影は急にかがみこんで、僕の足元に落ちた紙――勉強のプリントだ――を拾い上げた。
声の持ち主、すばしっこい影の正体は、重めのショートヘアーの小柄な女の子だった。
中学生か高校生くらいだろうか。
入院中なのだろう、水色の患者衣を羽織っていた。服の袖が余っていて、プリントを拾おうとする度に袖の先からか細い手がちょこんとのぞいている。
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