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ひとりきりになった寂しさが胸の中にどんどん溢れてきます。もう、理性を繋ぎ止めることなんてできなくなりました。
「……ひーん」
うつむいたとたん、涙がぼろぼろとこぼれてきます。
別れの悲しさを知ることも、にきび様が教えてくれた、社会人としての成長なのでしょうか。
「もっと一緒にいたかったんです……まだまだいろんなことを教えてもらいたかったんです……」
わたしはにきび様のことを思い出し、つい、そうもらしてしまいました。
でも、世の中には勘違いってあるんですね。たとえそれが高坂先輩のような有能な方であっても。
高坂先輩は動揺した表情でたどたどしく答えます。
「俺はいつだって厳しいことを言いすぎちまう。それなのにそこまで俺を慕ってくれていたなんて……。そんな根性のある女性は君ぐらいなものだ。だから、もしよかったら――」
悲しいと、嬉しいと、恥ずかしいがいっぺんに襲ってきて、涙がとめどなく溢れ続けます。こうなったら枯れるのを待つほかありません。
「ひーん、ひーん……」
泣きながら、いつかにきび様が言っていたことを思い出します。
『真摯な努力というものは、予想外の恩恵をもたらすこともあるものじゃ。たどりつけばわかるじゃろう』
ひょっとしたら、今がその時なのかもしれません。
にきび様がいらしたひたいに手のひらを当て、わたしは高坂先輩の問いかけに答える決心を固めたのです。
「高坂先輩、聞いてください。わたし、これからも――」
――まっさらな顔で前を向け、わたし。
おでこのにきび様の笑顔が、今でも鏡の向こうに見えそうな気がします。
【了】
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