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コーカスは手に持っていた大剣を一振りしてあたりに黒い炎が溢れる。
それから少女の意識はゆっくりと薄れゆく。
少女の身体は、黒い炎に炙られて痛々しく炭化している。
周りを見渡して、コーカスは呟いた。
「うん、これでこの世界にいる〝ホンモノ〟はいなくなったな……。さて、次は……っと。どこにいるんだろう、〝ホンモノ〟は……」
コーカスは自分の思うまま、次の場所へと歩き出す。
そしてコーカスが離れた後、村には何も残っておらず、あちらこちらが黒い炎に覆われていて、ただただ静かに揺れていた。
(うっ……なんで、私は……。今……)
──そして、夢から覚める。
「いやぁああああああああ!! はっ……! ゆ、夢……?」
「どうしたヒメカ?」
目の前には夢の中で死んでしまったはずの父親の姿。父親はヒメカの様子に心配そうな表情をして、首を傾げる。
「う、ううん。何でもないわ……」
ヒメカは首を横に振って『今まで見ていた悪夢』のことを忘れようとした。
しかしそれは、忘れることも出来ないくらいの凄惨な残痕である。
この瞬間、ヒメカの中に悪夢が棲みついたのだ。
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