傷物の花嫁

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二人の祝儀には、顰め面をした親族と泣いて喜ぶ親族が出席しておりました。 花婿は顔を隠した花嫁と酒を交わして契りを交わします。 花嫁もまた、静かに酒を飲み干しました。 「あんな傷物を欲しがるなんて…」 「仕方なく娶ってやったんだろう?」 「昔は見合い話もよく来ていたべっぴんさんだったのに……」 「家に押し入った男に火鉢で焼かれたんだとよ?」 「あの婿さんだって、いい処の見合い話があがっていたんじゃなかったかい?」 「あぁ…けど、あの花嫁さんが押し切ったって話だ」 「ホント、嫌な娘だよぉ…」 「可哀想にねぇ?花婿さんも」 ボソボソと聞こえる下世話は、確かに二人の耳に届いていました。 花婿は素知らぬ顔をして、花嫁は角隠しの下でひっそりと泣いておりました。
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