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文月先輩が商品のバーコードを読み取っていく。
その隣で、美織はおばあさんが差し出したショッピングバッグに商品を詰めていく。固いものは底に。お惣菜はビニール袋に入れて汁がもれないように。箱のお菓子は端に入れて壁にして、やわらかいサンドイッチは一番上にそっと置く。
「お会計、1,342円です」
文月が合計金額を言う。
――うーん、普通だな?
美織は謎が解けずに首を傾げた。
おばあさんは丸く膨らんだお財布を開いた。
「小銭、使っていいですよー。カウンターにざっと適当に出してもらったら、僕、選びますから」
おばあさんはカウンターの上で財布をさかさまにした。小銭がザラッと広がる。文月は五百円玉一枚と百円玉を五枚出した。
「これで千円」
さらに百円玉、十円玉、一円玉を選んで並べ、「四十二円。これでいいですか?」
「いつもありがとう」
おばあさんはカウンターの上の、先ほどよりぐっと少なくなった小銭を財布に戻した。
「いいんですよー。こっちはお釣りで小銭があった方がいいんだから、お互い様です」
おばあさんは唇をすぼめて、嬉しそうに笑った。
――あ、これか!
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