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会計しようとした時のおばあさんの困り顔の謎が解けた。おそらく、文月はいつも、おばあさんの小銭を使ってあげているのだ。
だからおばあさんは時間がかかっても、文月のレジがよかったのだ。
美織はほっこりと胸が温かくなった。
「そうそう、これね、おみやげ。この前、鶴岡八幡宮に行ったの」
おばあさんは小さな紙袋を文月に差し出した。
「えっ、そんな。悪いですよ」
「悪くないの。ただのおみやげだから」
おばあさんは小さな袋を文月に渡すと、ショッピングバッグを手に持った。
「あら。持ちやすい!」
文月が美織を見て、嬉しそうにうなずいた。
「ありがとうございます。またお越しください」
文月が言った。自動ドアの向こうにおばあさんの姿が消える。
「文月先輩! 小銭、いつも使ってあげているんですね!」
謎が解けた喜びと、先輩の優しさにときめいたせいで、声が弾んでしまう。
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