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「あー」文月は顎をいじった。
「うちのお店はお金を受け取るけど、最近、お金をお客様が自分で機械に入れるタイプのレジ、あるでしょ?
便利だけど、後ろで待っている人がいると焦っちゃって、小銭があってもお札を入れちゃうんだって。だから小銭が溜まっちゃうらしいんだよね」
「スマホ決済とかチャージするタイプのカードとかもありますけど、慣れるまでがねえ」
「うんうん。パンパンのお財布、重たそうでさ」
「さっき、もらったもの、なんですか?」
「見る?」と言いながら、紙の袋から中身を引っ張り出した。白地に「合格」と刺繍してあるお守りが出てくる。
「合格?」と、美織は首を傾げた。
「オレ、薬学生なんだ。今、6年。前に国家試験を受けるって言ったの、覚えていてくれたんだなあ」と嬉しそうに言って、お守りを胸ポケットにしまった。
「薬学生ってことは、薬剤師さんになるんですか?」
「うん。オレんち、田舎の小っちゃな薬局なんだよね。あ、いらっしゃいませ」
文月はすっとレジに立った。会計が終わると「ありがとうございました。またお越しくださいませ」と先輩が歌うように言う。
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