3. 朝の9時には風が吹く

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「あの時の続き、もう、言ってもいいかな?」 「え? あの時の続き?」 「うん。美織ちゃんの言葉は誠実で、安心する。袋詰めも丁寧で、いい子だなって思ってた」 「また、お越しくださいませ」  美織は冗談めかして本当の気持ちを言葉に乗せた。 「ん。これからもよろしく」  美織は文月の瞳を覗き込んだ。「これからもよろしく」なんて、年賀状みたいな定型文の向こう側が知りたくて。  文月が腰を屈めて、美織の耳元に顔を寄せる。 「……だからさ、好きだよ」  言の葉が、美織の耳朶をそっと揺らした。 おわり    
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