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さっきの客に手を握られた感触が、文月で上書きされていく。
美織はふーっと息を吐いた。ほっとしたら、さっき飲み込んだ涙がこみあげてきた。
「だいじょうぶ?」
見上げると、こげ茶色の瞳が心配そうにのぞき込んでいた。
――もめごとなんか間違いなく嫌いそう。なのに、ちゃんと守ってくれたんだ……
美織がまだふるえる唇の端っこを持ち上げて笑って見せると、文月は穏やかな笑顔で、「うん、うん」と何度もうなずいた。
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