/// 4.飯食うぞー!

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/// 4.飯食うぞー!

風呂上がりに新しい服を着こんで、ようやく人間らしい姿になった二人は1階に降りると、空いている席に座る。 サフィさんは周りの男たちからの熱視線をバシバシと受けていたが全く気にしていない様子だった。 ちょっかいを掛けてきた男どもが、触ろうとした手をつかんでバキリと折っていくので、僕は「連れがすみません」と丁寧に謝罪して【人体操作】を使って一瞬で直していく。 実は【人体操作】は自分にしか効果がない【超回復】を併用することで、ふれた状態であれば自分以外を完全回復することも可能であった、 マグマの中でこのスキルが発現したとき、何となくそんなこともできるということが分かった。 回復具合も操作できるので、直したい部分だけを回復させるとこともできる便利なスキルとなっていた。 実際にはやらないが、これを応用して大量に送り込んだ回復魔力で弾け飛ばしたり、逆に生命力を吸い取って全身はもちろん部分的にシオシオにすることも可能であった。 やらないけどね。 そんなこんなもあったが、ナタリーが持ってきた夕食を見ると、夢中にかぶりついてしまった。中々の味に心が安らぐ感じがした。 半面見た目はガツガツ粗ぶっていたが・・・ ガツガツと食事を喉に流し込むその姿はかなり見苦しいは思うが、この世界にきてまともな食事にありつけたのは最初の方だけだったため、久しぶりの食事であったのでゆるしてほしい。 なんなら一年近くは絶食だったのだし・・・ 結局、追加料金を払ってお代わりを頼み、パンパンにお腹を満たした二人は部屋に戻る。 サフィさんも相当な量を食べたのだが、僕のようにお腹が弾けそうなぐらい膨らんではいない。人化の魔法すごい!と改めて思った。 「そろそろ寝るか。ベットは一つです。僕は床に寝るからサフィさんが使ってね」 「おい!なんでそうなるんだ!二人部屋だからベットがデカイだろ!一緒に寝ればいい!」 その言葉に返答することはできない僕。何を言っているんだこの人は・・・ 「もしかして欲情してるのか!それなら俺もやぶさかではない!ヒューマンの愛情行動も理解してるしな!」 「そ、そんなことないよ!」 なぜかイラっと来てしまった僕はそのままベットの壁の方を向いて寝ころび布団をかぶった。 その後、なぜかシュルシュルと布ズレの音が聞こえてきたが僕は気にしなかった。 背中に暖かな何かがちょこんと当たっているのも気のせいだと思い眠りについた。 今日は【耐性-食】があるとは言え久しぶりの食事を楽しむことができた。 【耐性-睡眠】があるとは言え久しぶりの安眠を貪ることもできる。 まずは寝るだけだ!そう思って目をつぶり、どうせなら性的欲求にも耐性があればいいのにな・・・そう思いながらもいつの間にか眠りについていた。 そうもサフィさんと一緒にいると・・・元気を分けてもらってる気がするな・・・ ◆◇◆◇◆ その夜、微睡(まどろ)む俺は、 裏切った『遥かな頂き』の面々、朝倉含むクラスメートたちが、自分に冷たい笑いを向けて罵倒するのをただただ見ていた。 一人、また一人と振り返り自分から離れていく。 追いかけて一言いってやりたい。そう思っても足は動かない。 そして最後に・・・佳苗(かなえ)が寂しそうな顔で後ろを向くと、ゆっくりと遠ざかっていった。 寂しさがこみあげてきてその場に膝をついた。 悔しくて、情けなくて・・・でもそんなになっても強い怒りだとか、ましてや復讐をしたいとか思うことはなかった。 せいぜい「もう怒ったぞ!ぷんぷん!」という本当に怒ってるんだろうか?程度の誰得な反抗心が目覚めたぐらいであった。 そんな自分に一番腹が立つ。 こんな僕が・・・生きていていいのか・・・心が欠陥品のこの僕が・・・ そしてそんな僕は優しい暖かさに包まれる。 何とも言えない癒しを感じながら、棘の生えた心が満たされてゆく・・・ 僕の意識はまた真っ黒に閉じていった。 ◆◇◆◇◆ 朝、どことなくスッキリとした気持ちを感じながら目が覚める。 部屋にカーテン越しの朝日が差し込める。 そして自分が柔らかな腕に抱きしめられていくことに気づく。 慌てて体を起こすと、僕の視界には全裸で寝ているサフィさんが飛び込んできた。 「うぁ!うおっちょ・・・」 奇妙の声をあげながらも布団をサフィさんにかけるとベットを飛び起きる。 大丈夫。僕は服を着たままだ。 自分の衣服を確認してほっと一息つくが、先ほど飛び起きた振動でかは分からないが、サフィさんが体を起こしてこちらを見ていた。 「おはよう、タケル!良く寝れたか?」 「おはようじゃない!なんで裸なんだよ!早く服をきてくれ!そしてありがとうございます!」 その言葉に「なんだ?」とつぶやきながら布団から出ると、目の前で堂々と服を着ていくサフィさん。 きっとサフィさんに抱きしめられたから悪夢にならなくて済んだのかも。そう思っての言葉であった。 洗面所で簡単に身支度をすると、二人そろって1階におりる。 サフィさんは僕に後ろから捕まりそれを引きずるように移動していた。 ナタリーさんからは「仲が良いんですね」とからかわれながら、運ばれてきた朝食を貪った。 今日はいよいよ冒険者として依頼をうけ、この異世界という新たな人生を楽しもう!そう思っていた。 「なんだよ!金なら俺の鱗やらが大量にあるから売ればいいだろ!まどろっこしい奴だな!」 「そういうことじゃないんだよ・・・」 サフィさんには冒険をしてお金を稼ぐという男心が分からないようだった。
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