/// 6.マウントをぶらつこう

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/// 6.マウントをぶらつこう

まだお昼を少し回ったところだが、暫く森の中を探索していたがオーガは見当たらなくなっていた。 見かける狼型のワーウルフや犬型のコボルト、木に擬態するトレントもいたが、邪魔になるものだけをサクッと討伐しては収納にぶちこんでいた。 オーガに比べると格段に弱い魔物である。 全て討伐完了したのだと思いギルドへ戻る。 10キロ程度の道のりだが、行きと同じようにサフィさんに抱かれて飛んでいく。 若干恥ずかしいのだが「めんどくせー!」と僕の意見は却下される。 おかげで恥ずかしさに顔を覆っている数分ほどで街まで戻ってきた。 「ふぅ」と一息ついて地面についても僕の後ろに抱き着いたままのサフィさんは「つかれたー」と心にもない事を言うので「嘘つかないでくださいよ」といって体を放した。 ほどなくギルドに入るとカウンターまで進む。 「お早いお帰りですね。どのような状況でしょうか」 「あ、それよりなんですが・・・こないだからカルドニーさん変に緊張してません?」 「・・・え、ええ。まあ・・・」 「普段多分違いますよね。最初なんか畏まってませんでしたし・・・あまり緊張されると、僕もちょっとやりずらいかなって」 こちらをジーと見ているカルドニーさんは少しの間をおいて、意を決したように口を開いた。 「怒りません?」 「えっ?なにを?」 「その、私は結構口が荒いんですよ。ここの冒険者荒くれ多いですし・・・」 「ああ、そういう・・・別に僕らは気にしませんよ?」 「じゃ、じゃあ・・・いつも通りやらせてもらうよ。正直かなり緊張してたからな!いやー参った参った」 その言葉で僕も苦笑いしてしまう。 「で、途中経過の報告かい?」 「いえ、とりあえず12体ほど狩ってきました。多分もういませんよ。辺りも探索したので・・・」 「じ、じゃあここから裏に出れる。倉庫があるのでそこで素材を出してくれ、るかな?」 「わかりました」 また少し緊張してきたっぽいカルドニーさんに、苦笑いしながらついて倉庫まで歩く。 「ここに出してくれ」 「わかりました。よいしょっと・・・」 倉庫についたので促されるように本日の戦利品を吐き出す。 言わなくても良い『よいしょ』という言葉が出てしまうのは、年のせいか・・・ まあ17才なんだけどね。 「な・・・なんでほとんどが無傷なんだ!」 その素材を見て驚きを隠せないカルドニーさんは叫んでいた。 「いやーなんか脳だけ破壊する・・・みたいな?」 「特殊なスキルを持ってるんだな・・・まあここまで綺麗なものは中々でないから願ったりかなったりだが。ありがとう!」 「いえいえこちらこそ」 「俺もいっぱい狩ったぞ!何匹かバーンってなっちゃったけどな!」 「バーン・・・か・・・」 途中までカルドニーさんと普通に話していたのに、サフィさんが加わるとなんだかおかしくくなってしまうのは、仕方のない事だろうか・・・ 「とりあえず、1時間ほど待っててくれ!おい!ここの素材最優先でやっときな!」 「へい!」 「じゃあまた後で」 時間がかかるというので昼食でも頂こうと二人で倉庫を後にした。 ギルドマスターとしての姿をみて頼れる人ではあるのかな?と思う。 そんなことを考えているとサフィさんから背中を小突かれた。 「おい、さっきからあの女の事ばかり考えてるが、これから俺をもてなすんだろ?うまい飯くわせてくれんだろ?」 「ああ、わかりましたよ。この先に美味しい食事処があるんですよ。まあ僕は食べたことないけど・・・」 「そうか!うまい飯屋か!ん?食べたことないのか?なんで・・・あっ!そうか・・・まあそういう事もあるって!今日はいっぱい食べればいいだ!」 すぐに食べたことがないという僕のおかしな状況を察したサフィさんは、僕の肩に手を回して店の中に入っていった。 「へいらっしゃい!」 店員の威勢の良い挨拶を聞きながら、それなりに混雑している席を見渡し空いている場所を探す。 「姉御!こちらすぐに開けますから座って下せえ!」 そんな声が聞こえてきたので声の主を探す。 声の主がニコニコと笑顔を張り付けた厳つい男。 あのギルドでサフィさんにより壁まで直行便となった男であった。 「あ、兄貴もその節は失礼しやした!こちらの席をつかってくだせえ!おい!スタッフゥー!ここ綺麗にして早く注文きかねーか!」 「おい!こいついい奴だな!タケルも早く座ろうぜ!」 再度その男を鑑定して『シュタイン』という名前を知ったその怪力男を見ると、ぺこぺこと頭を下げていた。 サフィさんに促されるように、居心地の悪さを感じながらも席にすわった。 「それじゃああっしはこれで!」 そしてシュタインが体を小さくさせて店を出ていったと同時に、店員がテーブルを拭いた後、注文を聞いてきた。 椅子に座るとさっきの男、シュタインの頭を思い出す。 あれ絶対戦艦だよね? あの男のヘアスタイルはしゅっとした長いリーゼントなのだが、上の方はかなり遊ばせヘアとなっており、どう考えても戦艦と言ってよいほどのディテールになっていた。 なんたら級とか色々あるようだが、詳しくないので分からないが、今にも打ち出しそうな砲弾も何本か作られていた・・・ というかよく考えたら前回ギルドであった時はちょっと違った形をしていたような・・・ 毎朝気分によって艦の形を変えるのか?そんな想像が頭いっぱいに広がっていった。 「・・・様・・・お客様・・・」 「おい!タケル!何くうんだ!!!」 妄想の世界に旅立っていた僕は、呼びかけれていることに気づく。 サフィさんはいいとして、おそらく店員さんに呼びかけられていた方が向くと、近くまで顔を寄せていた女性と目が合った。 そしてその女性がかがめていた腰を戻して少し後ろに後ずさった。 あ、急に向いたからびっくりしたよね。すみません。 その女性は、顔を赤らめて「ご注文はどういたしましょうか・・・」ともじもじしながら注文を窺っているので「何かおすすめをいくつかお願いします」と言っておく。 「か、かしこまりました!」 急いで戻っていくその女性に、嫌な客って思われちゃったかな。と思い席に座りなおすと、目の前には不機嫌そうなサフィさんがそっぽを向いていた。 「お前はそうやって次から次へと落としていくんだな!」 「なんの話だよ・・・」 よく分からないことを言ってくるので確認したのだが「けっ!」という不機嫌な返事が返ってきたので気にしないことにした。 すぐに大量の食事がテーブルに並べられたので、気持ちを切り替えて食べ始める。 最後に先ほどの店員が「サービスです」といっていくつかのフルーツが入っている大きな器をおいていった。 よかった。どうやら機嫌を損ねていたわけではなかったようだ。 程よく全部食べ終わったころには、僕のお腹はまたパンパンに膨らむのであった。 僕の倍は食べたであろうサフィさんは例のごとく見た目全く変化なしである・・・羨ましい。 気持ちよく店から出ると、武器とは言わないが、防具や魔道具なんかも見てこようと魔道具屋まで歩く。 みちすがら、魔道具店という看板を掲げた露店を見つけたので覗いてみる、 「お!これは攻撃の指輪か!こっちが防御の指輪!倍にアップするのに5万エルザ!おい、おまえ!こんなに安くして破産しねーのか!」 「いえいえ。私も趣味でやっているもので。採算度外視ですよ!美しいお嬢さん!」 『攻撃の指輪(効果2倍)50000エルザ』などと書いてあるプレートにくっついている指輪を見てサフィさんは店主に話しかけ嬉しそうに笑う。 安いよね。普通なら1千万ぐらいの魔道具だよね・・・本物ならね。 「やめなよサフィさん。これ全部普通の指輪だし。おじさんもそんなことやってるといつかひどい目にあうよ。というかそのままこの人にこれ売り付けたら確実に死ぬよ・・・」 「ぼうず!何よいってるんだこれは正真正銘の、ひぃぃ!」 「おい!本物なんだよな!嘘ついたらぶっ殺すぞ!」 店主が言いがかりをつけるなと凄もうとしていたが、それは途中でサフィさんに胸倉をつかまれる形で阻止をされていた。 「サフィさん、今回は勘弁してあげようよ。小さな町だし、街の人もあまり本当とは思ってないから売れてないようだし・・・」 「本当に・・・普通の指輪なのか・・・」 あ、なんかサフィさんの顔が怖い・・・ その顔に築いた店主がものすごい勢いで額を地面に打ち付けて土下座をしていた。 「ゆゆゆ・・・ゆるしてくだせー!出来心だったんですーーー!」 「サフィさん、行くよー」 「けっ!もう二度と店出すな!・・・死ね!」 僕がサフィさんの手を引き、店へと急ごうと声をかけると、サフィさんは物騒な言葉を投げつけ、僕について歩き始めた。 手を放すタイミングが分からずしばらくそのまま歩いてると、なぜかサフィさんは機嫌が戻ってきたようでなにやら鼻歌まで聞こえてきた。 そしてやっと目的の魔道具店へ到着すると、今がその時!と手をこっそり話していた。 その後、僕はまたサフィさんに背中に抱き着かれながら入店した。恥ずかしいのですが・・・ 「いらっしゃいませ」 さすが高級店を覆わせる店内に入ると、きっちりと黒の制服を着こんだ美人さんが挨拶をしてきた。 そこを素通りすると、ショーケースにある指輪などがあるコーナーへ移動した。 二人の格好に少し眉をピクリと反応させていたようだが、さすがにそれ以上は何もなかった。さすが高級店。 そちゃ店内に女性が後ろに張り付いてズルズル歩いている冒険者がきたらイラつきますよね。ごめんんさい。 気持ちで負けずに各商品の効果と値段を見ていく。 『攻撃の指輪(効果10%)500,000エルザ』 まあ・・・そうだよな。やっぱり10%で50万だ・・・倍化であれば価格は倍の倍の倍!と一気に跳ね上がっていく。 というか10%でこんなにするのか。手持ちは70万ほど。もちろん鱗を全部換金したのなら、もっと良いものであっても買えるのだが・・・今はあきらめるか。 「サフィさん。魔道具は今度にしよう。今は防具でも見てみようよ」 「おー、わかった!」 そして防具を売っているコーナーを見ると、10万エルザと比較的お手軽なものから多種並んでいた。 すると、一着の真紅のドレスのようなローブが目に映る。 『真紅のローブ』防御力が5%アップ、魔法耐性(低)という効果もそれなりだが、何よりもサフィさんに似合うのでは・・・と思ってしまった。 値段を見ると、60万エルザである。買えないわけではなかった。 どうせこの後オーガの報酬を貰えるんだと思い、サフィさんに「これ着てみたら?」と進めてみた。 「えっ、その・・・いいのか?」 そんな初めてのしおらしい反応に戸惑いながら頷いておく。 するとサフィさんはそのローブをもって試着室に入っていった。 僕はその間に動きやすさ重視でお値段お得な廉価品の軽鎧、98,800エルザを購入した。 暫く待つと、試着室からはなんとも・・・目線をどこに向けたらいいのか分からないほどの美女がこちらへ向かってくる。 この世界の試着室ではお付きの人が一緒に入ってセットなどもしてくれるらしい。 頭にかぶった帽子部分から出ている少しウィーブのかかった美しい赤髪がとてもよく似合っていた。 「と、とても似合ってる、よ。これでいい、かな?」 なんでこんなに言葉が発しにくいのであろう。美しさに圧倒された僕は、そのままカウンターへ行くと代金をトレーへ出していた。 店員さんはすぐに会計をしてそのまま着ていくというサフィさんと共にギルドへ戻っていった。 どことなく気品のある歩き方に見える。というか大人しく歩いてるサフィさん。 「あの、大人しいね」 「いやあ、さすがに汚れたら困るし・・・なんか緊張するなこういうの。でも良かったのか?高そうだったし・・・」 「いいんだよ。オーガの分はこれから貰えるしね。そしてこれからはもっと稼ぐし・・・気にしないでいつもの通りにしてほしいな」 「そ、そうか・・・そうだよな!」 そう言うと、サフィさんは嬉しそうに笑顔になると、僕を後ろから抱きついていた。 いや、今まで以上にと緊張してしまうのですが・・・ 「よーし!ギルドまでレッツゴー!お金もらって豪華な晩飯が待っているー!」 「お、おー!」 一応ノリは合わせてみたが、周りの目も合って恥ずかしさは倍増であった。 普通に隣に歩いてほしい。 やっとの思いでギルドで報酬と買取分を貰った。160万エルザとかなりの金額になった。 カルドニーさんはサフィさんを見て固まっていた。 その後、宿に戻ると朝着ていた服に戻ると下に降り食堂で腹いっぱいに食事を楽しむのだった。
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