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/// 7.次の目的地どこー?
初のオーガ討伐依頼を終えた二人は、その日の夜に次なる目的地を話し合った。
「とりあえずここでの最強は大したことなかったから、次はもっと強い奴とやりたいな!」
「サフィさんが楽しめそうな強いやつね・・・いませんよそんな魔物・・・」
「なんでだよ!」
「大体がこの国の勇者がサフィさんを最終目的にしてたんだよ?サフィさん最強なんだし・・・」
「なんだよ、急に褒めるなよ。照れるじゃんか・・・じゃあ、次どこいくんだ?」
なんだかまたしおらしくなったサフィさんにちょっとドキドキしてしまう。
本当は今日行った魔道具屋で強化系の指輪でも買おうかなと思ったけど、現状あまり困らなそうだからどうせなら王都で良いのを買おうかな?と思っていた。
「とりあえず次は20キロほど先にジャングリラという街があるからそこかな?最終目的は王都だけどね」
「そうか!ところで王都ってでっかい街で例の召喚されたって城あるところだよな?勇者とかスゲーのいるのか?」
「今どうなってるんだろう。サフィさんも知ってるとおり僕も1年近くマグマの中だったからね・・・サフィさん討伐されたことになってるよね。そしたら勇者とか英雄なんていわれてなんなら姫と結婚とか・・・どうなってるかさっぱりだね」
「なるほど・・・」
「まあ、そうじゃなくても王都には前人未到のダンジョンはあるみたいですし、そこならサフィさんより強い魔物もいるかもしれないよ」
「俺よりも、か・・・そうか・・・」
なんだかブツブツと言い始めたサフィさんがちょっと怖い。
とりあえず今日はここまでと僕はベットに我先にと寝ころび壁側を向いて寝りに落ちた。
◆◇◆◇◆
次の日、朝早くにスッキリとした目覚めを感じで体を起こす・・・分かってはいたのでちらっとだけ隣をみて、サフィさんに布団をかぶせてベットから降りた。
身支度を整えていると、すぐにサフィさんも起きてきて、僕の目の届く範囲で服を着る。
もう少し恥じらいを持ってほしいものだ。と目の保養をしつつ「おはよう」と声をかける。
「よし!今日も冒険たのしみだな!」
「そうだね」
朝からサフィさんの笑顔は眩しい。
支度を終え、朝食を食べると、女将さんとナタリーに次の街へ向かうことを告げると「またいつでもおいで」と声を掛けられ、嬉しくなる。
宿を出るとなぜか待ち伏せられているようにシュタインとも遭遇して、挨拶をする。
ストーカーかな?それより今日も一段と派手な戦艦リーゼントだ。長く大きな主砲が黒々としている。
そして町の門を過ぎると、お約束のようにサフィさんが後ろから抱きついた。
「次の街、ジャンガラゲってどっちだ?」
「ジャングリラですよ。方角はこっち側で、ここからだと20キロほどになるのかな?」
ジャングリラの方を指さし説明していく。ジャンガラゲってなんだ・・・
「なるほどな!じゃあ王都はどっちだ?」
「方向ほぼ一緒ですが200キロってとこでしょうか?歩いた感じですが・・・」
「そっか、まあ乗れよ!」
そう言ってサフィさんは僕を後ろから抱きしめた。
「あの・・・やっぱ恥ずかしいんですけど」
「まあまあ。その内慣れるだろ!じゃあ・・・王都まで!レッツゴー!」
「えっ?あっ!!!うわぁぁーーーー!」
アフィさんはふざけたことを言いながら、僕を抱く手を強めると一気に空へ飛び立った・・・
やっぱり昨日何かしら考えていたのはこれだったのか・・・
◆◇◆◇◆
サフィさんとの空の旅は続く。
途中で火竜本来の姿に戻ると、僕を背中に乗せ換えるとさらに加速していった。
結界か何かはられているようで、不思議と風などは感じなかった。
もしそのままであれば、【精神耐性】があったとて風圧でサフィさんの上で粗相する自信がある・・・
「サ、サフィさん!本当に王都までいくんですか!」
『もちろん!ダンジョン行きてーし!タケルもそうだろ!あ、方向これであってるか?』
「あ、ああああってる!ちょっと左かもー!多分半分ぐらいまで来たと思うよ!」
『りょー!飛ばすぞーー!』
初めての騎竜体験にもうどうにでもなれと諦めてサフィさんにすべてをゆだねてしまった僕は、その後、大きな衝撃と共に王都近くの森へと突っ込んでいった。
「ついたー!」
「いたたたた・・・痛くはないけど・・・」
衝撃で、痛みはないのについつ痛いと言ってしまう。少し恥ずかしさもあり「ゲームやってたりすると出るよね?」なんて聞いていない言い訳を呟いてみた。
たしかにこの森を出るとすぐ脇には王都までの整備された大きな道がある。そして目視で門が見える位置まできていた。
勇者パーティでは徒歩だったので、2か月ぐらいかかった道・・・改めて竜の機動力の高さも垣間見えた。もちろん勇者との道のりは途中で依頼を受けたり、宿泊したりとあったのだから比較にはならないが・・・
「サフィさんは凄いですね」
「な、なんだよ!なんかお前・・・おかしいぞ?」
照れるサフィさんを見て、ああサフィさんは自分の能力を褒められると喜ぶチョロ竜なのかもしれない。そんなことを考えてしまう。
「おい!なんか変なこと考えてないか?」
「いや、そんなことあるわけないでしょ。行きましょうサフィさん」
そういって手を出すと「おう」と小さく返事して手をつないでくるのでやっぱチョロ竜と確認した。
そして手を強めに握られ、「あうちっ!」という僕の悲鳴と同時にバキバキと骨の砕け散る音がした。
どうやらサフィさんは何らかのスキルにより、僕の思っていることを感じ取れるらしい。そんなスキル、鑑定では確認できなかったけどね。
なんにせよ、あっという間に王都に到着してしまった。
さてどうしたものか・・・クラスのみんなはどうしているのかな?そして佳苗(かなえ)は・・・
一抹の不安を隠せないまま、王都の門を抜ける。
ここでも特に検問などはない。警備のための衛兵はいるがただ眺めるだけであった。
王都に入ると、少しだけ懐かしさを感じつつ冒険者ギルドへ向かって歩き出した。
途中、背中におぶさろうとしてくるサフィさんを避け、不機嫌になる前に手をつないでおく。
暫く歩くとどうやら鼻歌が出るほどには機嫌は良いようだ。
さすがにサフィさんを引きずる姿は、知り合いに見つかったら恥ずかしいからね。
そしてたどり着いたギルドの建物前。さすが王都。相変わらずギルドも大きいなと感じた。
そして懐かしさを感じつつギルドの中へと入っていった。そんなに入ったことなかったけど・・・
とりあえずはと、受付に向かって歩き出すと、走り出したサフィさんが受付の女性に「ここらで最強の魔物の討伐依頼はなんだ!」と聞いていた。
相変わらず血気盛んだなと思いながらサフィさんの元に行こうとしたのだが、不意に呼び止められる。
「おい!お前、大川だよな!」
「マジっすか!」
声の方ほ振り返ると、そこには見知った男が二人立っていた。
「死んだって聞いてたが・・・やっぱり怖くて逃げてたんだな!」
「マジ予想どおりでしたね!とんだ臆病もんだ!勇者様が庇ってくださってたけど!ひっでー!この卑怯者が!」
カーストトップだった元クラスメート、前川義男とその取り巻きの稲賀直人だった。
そして前川が俺を突き飛ばそうと手を伸ばして肩を押す・・・がびくともしない。
そりゃそうだ。前川はレベル100を超えたばかり。基本ステータス違いすぎだ。
あれ?おかしいな?みたいな顔をしながらも、僕の全身を確認するように眺め「ふっ!」と鼻で笑う。
「おい!初心者丸出しの軽鎧で武器もなしか!ドブ攫いでも探しに来たか!」
「あーあ!臭くてたまんねー!やだやだ!」
僕は見ていて飽きないな、とぼんやりと眺めていた。
不思議と怒りは沸いてこなかったが、もしかしたら【精神耐性】が仕事をしていたかもしれない。
「おい!タケルになんかようか!クソガキども!」
「あ?」
「なんだこの女!」
いつの間にか戻ってきたサフィさんが僕の前に割り込んで二人に凄んでいた。
あっ、ちょっとこれやばそうな顔になってる・・・絡まれた時以上に焦せってしまう。
「サ、サフィさん。依頼は見つかりました?見つかったら出ましょうか」
「あ、ああ!行こう!すげーの見つけた!」
手を握って連れ出そうとすると、一転、凄くうれしそうなサフィさんである。
「おい!待てよ!俺はここで訓練所の隊長やってるんだ!Eランクに上がる時には手合わせしてやるから!まあボッコボコにしてやるけどな!」
「義男さんの出る幕はないっすよ!おれがボッコボコにしてやりますから!」
「っていうかランクアップ試験受けれたら・・・の話だけどなー!」
「そりゃそうですねー!」
バカ話をする二人がこちらを指さしてるので、サフィさんの顔色がおかしなことになっている。
僕はすかさず握っている手に力を入れると「いきますよ」とにっこり笑ってみた。
そして笑顔を咲かせたサフィさんと二人でギルドを後にした。
よかった。サフィさんの機嫌が直って・・・
よかった。元クラスメートに死人が出なくて・・・
◆◇◆◇◆
僕たちは王都でも高級な部類に入る宿の一番高い部屋を取った。
当然、今回も一部屋だ。
二部屋といった瞬間、サフィさんが真顔になったのですぐに一部屋と言い直した。
危ない危ない。僕もバカじゃない。覚えておこう。
疲れを癒すようにお風呂を先に頂くが、例によってタイミングよくサフィさんが入ってくるので、あきらめつつ目の保養をさせてもらった。
豪華な夕食を頂き、その日は大きなベットに寝転がると「寝るか!」という声と共に部屋の明かりが消され、しゅるしゅるという音と共に後ろに暖かなものが押し付けられた。
ふと、昼間のことが思い出された。
元クラスメートと言ってもそもそも接点なんかなかった。
お互い名前こそ知っているが数えるほどしか話したこともない。
でもこの世界に転生してから、ねたまれ、うらまれ、そして蔑まれた・・・
そんなことを考えていると、なんだか自分がこの世界にいちゃいけないのではという不安感に体を丸めた。
「おい・・・俺はタケルのこと、好きだぞ・・・」
耳元で聞こえたサフィさんの声に・・・僕は不覚にも声をあげて泣いてしまった。
それからしばらく僕を抱きしめる手に力をこめるサフィさん。
僕も子供のように泣き、そしてサフィさんの方に向き直ると、泣き顔の僕をみて「俺の胸で良ければ貸してやるよ!」となんとも男前のことを可憐な笑顔で言い放った。
そしてその誘惑に負け、胸にうずくまり・・・その夜、僕はサフィさんと一線を越えてしまった。
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