ペースメーカー

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「この子の心臓のAIは、心臓の動きを収縮したり、心房細動を抑えたりする等の治療レベルのことしか出来ません。それこそ心臓を破裂させたり,止めたりすることも出来ない。しかも強いて言うなら知能はありますが思考はない。感情もありませんので乗っ取るなんてこと1000%あり得ません」  医師の言葉にママは、恥ずかしそうにしながらもほっと胸を撫で下ろす。  医師の言っていることは間違っていない。  しかし、正しくもなかった。 (心配いりませんよ。私は、貴方を乗っ取ったりしませんから)  胸の辺りから直接声が送られてくる。  その度に少しだけど胸に熱が灯る。  これは手術が終わってからずっと聞こえてくる声。  僕の心臓の声だ。  そう確かに僕の心臓は破裂することも止まることも乗っ取ることもない。  しかし、知能と思考、そして感情を持ち合わせていたのだ。 「このAIが与えるものは彼の命とそして愛です」  医師は、自分の胸の辺りで両手を合わせてハートの形を作る。 「彼は、文明という愛を与えられたのですよ」  そして僕は、意思を持った自分の心臓に"愛"と名づけた。  愛のお陰で僕の生活は劇的に変化した。
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