ペースメーカー

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 どれだけ走っても疲れなくなった。  身体中に血が巡り、細かった手足に固い筋肉が付いた。  不整脈が整ったからか緊張することが減った。無意味に鼓動が速まってしまうことがなく、冷静に物事を考え、どんな環境でも学んだことを活かせるようになった。  そして・・・・。  僕から感情を奪い去った。  12年後・・・。  重い闇に包まれた(くる)埃臭い倉庫の中に汚らしい悲鳴が走る。  僕は、自分の足元でくだらない苦鳴の表情を浮かべたターゲットの1人を見て嘆息する。  突然、現れた僕と、そして何が起きたのか分からないままに殺された仲間を見て他のターゲット達に動揺と恐怖が走る。  僕は、そんな彼らをゴミでも見るように一瞥しながら愛に話しかける。 「右手に血を集めて硬くして」 (了解しました)  愛は、無機質で丁寧な口調で僕の脳に語りかける。  赤血球によって身体中の鉄分が右拳に集まる。  普段は、管楽器を弾く為に枝垂れ桜のように滑らかな僕の指が肉詰めのように太く、赤黒く変色していく。  異形に変じた僕の右拳を見てターゲット達は悲鳴を上げて逃げていく。 「愛」
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