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現在の私
私は今、老人ホームに住んでいる。
75歳の時、この施設に入り、1年が経とうとしていた。
きっかけは、この施設に入る2ヶ月前だ。
車を運転している時、私はバッドで殴られたような激痛に見舞われ、気を失った。
目を覚ますと、そこは病院だった。
私はベッドで横になって点滴を受けている。左右にベッド柵がついており、まるでベビーベッドで寝かされているようだった。
「身体を動かしたい」
私はそう思った。
だけど、自分の意志で身体を動かす事が出来なかった。
「丸1日寝てましたよ」
私の担当と思われる看護師が現れ、そう告げてきた。
しばらくして、医者が私の目の前に現れる。
「くも膜下出血でした。もう少し遅れてたら命はなかったですよ」
医者は表情を変えず、そう言ってきた。
「命なんてなくてもいい。死んだほうが良かった」
「何を言ってるのですか。生きたいのに亡くなられる方もおられるのですよ。くじけずに頑張ってください」
医者はそう言うが、私は本当に死んでもいいと思った。
私には身寄りがいない。
だから生きていても仕方がない。
この先、何を楽しみに生きて行けばよいのかもわからなかった。
私は、1週間ほど安静にしていた。
動く事が出来ないため、その間は点滴を打たれ、おむつをはかされ、裸にされては排泄物を処理され、温かいタオルで身体を拭かれていた。
医者から「離床して良い」と許可が下りるも、私は自身の力でベッドから起き上がれなかった。
身体の左側が全然動かない。
くも膜下出血の後遺症である。
起き上がりと立ち上がりは人に手伝ってもらった。
歩くことができないので、車いすに座った私を誰かが押してくれた。
全ての行動が一人でできない状況であった。
リハビリを行なっても効果がでない。
話せるけれど、ろれつがまわりづらくなっていた。
「自宅へ戻るのは困難」
そう判断した病院の計らいで、私は退院したと同時に、今の施設へ入所する事になった。
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