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再会
そんなある日、この施設に新しい人がやってきた。
女性だ。80代後半といったところか?
リクライニングの車椅子に座っている。
車椅子を押しているのは、その人の息子と推測する。
二人は職員に誘導されて、1週間前に亡くなった人の部屋へ入っていった。
この施設は、亡くなった人もたくさんいる。
その日、施設職員は悲しむけれど、3日経てば、みんなが平常心を取り戻し、1週間経つと、新しい人が入所して、何事もなく時が流れる。
この繰り返しだ。
私は、かろうじて動く右手と右足で車椅子を動かし、おそるおそるその人の部屋の前に行く。
名前が知りたくて、部屋の扉横にあるネームプレートを見る。
「えっ」
私は驚きを隠せなかった。
「笹川友香様」
確かにそう書いていた。
この名前は忘れもしない。
この人に会わなければ、私はもう少しまともな人生を歩んでいたかもしれない。
そう思えてならなかった。
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