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出会いと別れ
私と彼女との出会いは、60年以上も前になる。私は小学四年生だった。
校庭にある桜の木が満開だったのを覚えている。
彼女は担任教師として、私の目の前に現れた。
「綺麗な人だ」
私はそう思い、胸がドキドキした。
今でも鮮明に覚えている。
当時、私は彼女と仲良くなりたい一心で、勉強に励んだ。
テストで100点に近い点数をとり、彼女に喜ばれた時は最高だった。
「亮平くん。頑張ったね」
「先生ありがとう」
その時に見せてくれた彼女の笑顔は、今も私の心の中に刻まれている。
本当に素敵な笑顔だった。
その気持ちは、五年生、六年生になっても変わらなかった。
とにかく彼女の笑顔が見たかった。
彼女と話がしたかった。
それが嬉しくてたまらなかった。
「私と彼女はずっと仲良し」
そう信じていた。
だけど、その気持ちは、もろくも打ちのめされた。
卒業間近の時、私は彼女に恋人がいると知ってショックを受けた。
「先生に好きと言えなかったな」
私の恋は、片想いで終わってしまった。
それでも私は、何かと理由をつけて、彼女に会いにいった。
彼女の笑顔が見たいから……。
だけど中学2年の時、彼女が結婚すると知った。
「教師辞めるの。だからもう今川くんとは会えない」
それが彼女からの最後の言葉だった。
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