出会いと別れ

1/1
前へ
/7ページ
次へ

出会いと別れ

私と彼女との出会いは、60年以上も前になる。私は小学四年生だった。 校庭にある桜の木が満開だったのを覚えている。 彼女は担任教師として、私の目の前に現れた。 「綺麗な人だ」 私はそう思い、胸がドキドキした。 今でも鮮明に覚えている。 当時、私は彼女と仲良くなりたい一心で、勉強に励んだ。 テストで100点に近い点数をとり、彼女に喜ばれた時は最高だった。 「亮平くん。頑張ったね」 「先生ありがとう」 その時に見せてくれた彼女の笑顔は、今も私の心の中に刻まれている。 本当に素敵な笑顔だった。 その気持ちは、五年生、六年生になっても変わらなかった。 とにかく彼女の笑顔が見たかった。 彼女と話がしたかった。 それが嬉しくてたまらなかった。 「私と彼女はずっと仲良し」 そう信じていた。 だけど、その気持ちは、もろくも打ちのめされた。 卒業間近の時、私は彼女に恋人がいると知ってショックを受けた。 「先生に好きと言えなかったな」 私の恋は、片想いで終わってしまった。 それでも私は、何かと理由をつけて、彼女に会いにいった。 彼女の笑顔が見たいから……。 だけど中学2年の時、彼女が結婚すると知った。 「教師辞めるの。だからもう今川くんとは会えない」 それが彼女からの最後の言葉だった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加