壱 大切な人

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双子は凶兆、生まれし赤子の呪と言祝ぎ偏りぬれば────双子は不吉の印、生まれた赤ん坊の呪と言祝ぎが片寄ってしまうから。 その言葉の始まりは遡るのが難しいほど古い。神職に嫁ぐ娘たちは親から子へ親から子へとそう言い伝えられてきた。 何故双子の呪と言祝ぎが割れてしまうのかを何百何千という神職が調べてきたが、今になってもその原因は分かっていない。 ただ分かっているのは、産まれてくる双子の九分九厘が呪と言祝ぎが割れるということ。そして────。 「……呪しか持たないということは、その子が言葉を発するだけで相手を呪ってしまうということなんだ。もっと言えば、その子が泣くだけで誰かを呪う可能性がある」 居間のテーブルを挟んで幸と清志の前に座った隆永は項垂れるように深く顔を伏せてそう言った。 「でも、もしかしたら割れない可能性だってあるんでしょ……?」 「限りなく百に近い九分九厘なんだよ。もしかしたら、なんて無い。間違いなくないんだよ」 「でも、でも……もしそんな子がお腹の中にいるなら、今もう私に何かが現れてるんじゃ」 「それは今、まだ双子が幸の腹の中にいて二人で一つの状態だからだ。産まれるまで、一人目の子が腹の外に出た瞬間、割れる」 何を言っても全てを諦めたように笑って隆永が淡々と答える。
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