序 出会い

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一昨年に隆永が御祭神より天啓を受けて、次の神主に選ばれてからというもの何度も何度も繰り返されていた会話だ。 神々廻家長男として家庭をもて、子供を産ませろ、可能ならば良家の子女と。 父親を起点にその声は大きくなり、やがて神々廻家の長男が嫁を探しているという話は全ての社に広がって行った。 隆永さんうちの娘なんだけど、とことある事に親たちから年頃の娘を紹介される。 紹介されるまでもなく皆見知った顔だった。学生時代の同級生後輩先輩その他諸々。皆幼少期から長い時間ともに過ごして妹のように可愛がり、姉のように慕っていた友人だ。 それこそ互いがおねしょをして尻を叩かれる所なんて光景まで見てきた、それ以上の赤っ恥だって数え切れないほど共有している。 そんな人たちを今更"女"として見られるわけがなかった。 のらりくらりとやり過ごしていたが、ついに見合いの席が設けられることになってしまったのだ。 相手は神事や集会で集った時に、何度か面倒を見たことがある妹のひとりだ。 あれやこれやと断る言い訳を試みたが意味はなく、とうとう当日になりこうして仕事という理由をつけて見合いの席から逃げ出したのだ。
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