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クリシュナが犬歯をむき出しにする特徴的な笑みを浮かべると、まるで彼を嫌うように、鋼鉄の刀身が渦巻き状に丸まった。
蛇のようにとぐろを巻いてしまった剣を見て、青年は呆然とするしかない。
クリシュナは笑いながら青年の顔をわしづかみにした。青年の身体を片手で軽々と持ちあげ、丁寧にガラス戸を開けて窓から外へと投げ捨てる。
人間に対する扱いではなかった。
「玄関から帰るのと、こっちから帰るのと、どっちがいいか選ばせてやる」
窓の外を眺め、クリシュナは言った。
ジェイは初老の男を丁重に抱え起こすと、クリシュナにむかって頭をさげた。
「ごめんねサヴィトリ。一緒に料理できる雰囲気じゃないみたい」
サヴィトリとすれ違いざまに、ジェイは弱々しく笑う。
突然、初老の男はジェイを突き飛ばした。おぼつかない足取りでクリシュナに近付き、すがりつく。
「クリシュナ殿! このままでは建国より受け継いできたタイクーンの血筋は途絶え、遠からず我が国は滅びます。
かつて我が国の大師であったあなたがクベラを見捨てるおつもりか!? どうか、どうかご慈悲を!」
クリシュナは笑った。
裂けたのかと思うほど口角を吊りあげ、鋭すぎる犬歯をむき出しにして。
「国なんて全部、滅んじまえ」
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