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(名は体を表すと言うが、あの女、ニラみたいな頭の色してたな)
余計なことを考えつつ、サヴィトリは注意深く周囲を見まわす。
が、どこにもその姿はない。
しばらくの間、サヴィトリはそのまま弓をつがえていたが、鳥の穏やかな鳴き声が聞こえ、ようやく弓をおろした。弓が発光して消え失せると、指輪の石に空色が戻る。
サヴィトリは細く息を吐き、指輪を撫でた。
九年前ぶかぶかだった指輪は、今は皮膚のようになじんでいる。
(……あれから、手紙の一通もくれなかったな。ナーレは、どれだけ変わってしまった?)
夢で見た少年の顔を思い、サヴィトリは服の胸元を強く握りしめた。
穏やかな空色の髪も、猫の目のような金色の瞳も、いじわるで怒りっぽくて、でもお節介で優しかったことも、すべて色あせずに覚えている。
だがきっと、自分が成長したように、相手も変わっているだろう。
いつまでも記憶のままであるはずがない。
(でもよりによって、どうしてクベラなんかに行ったんだろう。師匠が一番嫌ってる所なのに)
師匠――クリシュナはサヴィトリとナーレの養父だ。現在もサヴィトリと二人でこのハリの森で暮らしている。
クリシュナは、クベラという国を蛇蝎視していた。
以前どうして嫌いなのか尋ねたところ、「とにかく全部が気に食わねぇ」と言っていた。その理由のうちの一つに、自分が深く関わっているのだろう、とサヴィトリは思う。
「とにかく全部が気に食わねぇ」ような所に、養い子としても術の弟子としても育ててきたナーレを行かせてしまったのかわからない。
ぎゃあぎゃあ騒ぎ散らしていたのは幼い自分だけで、クリシュナが反対していた記憶はなかった。
サヴィトリは空を仰ぎ、意識して息を吐き出す。今日の森の中の空気は、何故だかいつも以上に重苦しいような感じがした。
ハリの森での生活が無条件に心地良かったのは、あの時までだった。
ナーレが出て行き、養父のクリシュナのことを「師匠」と呼ぶようになってから、年々胸の中におりが溜まってきているような気がする。
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