俺の連れ

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俺の連れ

あれからずっとあいつの事が気になった。 ホテルも知らない電話もない・・・・・・どうやって探していいかもわからない。 あの夜、俺が座り込んでいた場所はサークルの飲み会があったあたりだろうと、気になる場所を歩いてみたがそんな偶然などあるはずもなく・・・・・どこにもあいつは居なかった・・・・・ あいつと逢ってから一週間が経った。 もう既に日本にはあいつは居ない・・・・・ 何も知らない彼にもう一度逢いたかった。 Michel 朝陽(ミシェル あさひ)・・・・・それだけじゃわかんねーよ。 それでも諦めきれなくて、街を彷徨いながらあいつを探していた・・・・・・ ビルの隙間やさまざまな店を覗き、周囲を見回しながら、たまに立ち止まり彼を探し歩いた。 ふらふらと歩いていると突然誰かとぶつかってしまった。 見ると機嫌が悪そうな男3人連れだった・・・・・・ 「おい てめーぶつかったの分かってんのか?知らんふりか?」 「すいません・・・・」 「すいませんですまないんだよ」 「じゃぁどうしろって?」 「おまえ可愛い面してんじゃん、付き合え」 「冗談でしょ、俺の趣味じゃねーよ」 そう言ったかと思うといきなり胸ぐらを掴んだ、酒臭い息を吐きかけ、ニヤつく男に恐怖より嫌悪感が沸いた。 俺よりはるかにでかい男達が身体を撫で回す・・・・・ 足が浮いて抵抗しようにも力が入らなかった・・・・・・首が絞まって苦しく、そいつの手を掴んでみても離れやしない その時もう一度聞きたかったあいつの声が・・・・聞こえた・・・・・ 「おい 俺の連れになにしてんの?」 「だれだ てめーは?」 「だ・か・ら その子の連れだって言ってんじゃん   早く放せ」 「なにー 日本人でもねーくせに黙ってろ」 「その子を離さないなら覚悟は出来てんだろうな?放せ!」 そういうとあさひは男の腕をねじ上げた……… 男は顔を真っ赤をして俺を掴んだ手を離した、持ち上げられた身体は、急に手を離され地面に落ち尻もちをついて座り込んだ。 俺が地面に落ちた瞬間・・・・・・あさひの蹴りで男の身体が吹っ飛んだ。 「こころ、行くぞ」 あさひが手首をつかみ、引きずるように走り出した・・・・・ 「こころ 大丈夫?」 「大丈夫じゃねーよ、何処行ってたんだよ?」 「何処って・・・・・」 「俺 お前を探しててあんなやつに絡まれたんじゃねーか」 「探してたの?俺の事」 「そうだよ・・・・・」 「なんで?」 「なんでって・・・・・・だから」 「逢いたかったの?」 「別にそうゆうわけじゃないけど・・・・・」 「俺 逢いたかったけど」 「なにそれ?今それ言う?」 「だってそうだから・・・・・・」 「だったら電話番号とかホテルとか言えばいいじゃん・・・・・教えなかったくせに」 「悪かった、スマートフォン買ったから番号教える」 「・・・・・貸せ・・・・・・番号とSNS登録してやるよ」 「こころって強引」 「今度からメールするからすぐ返信よこせよ」 「わかった」 「あれからどこ行ってたんだよ?」 「あちこち見て回ってた・・・・・暫く日本にいる事にしたから部屋も借りたし」 「そうなんだ・・・・・・どこ?」 「なにが?」 「部屋だよ、お前の部屋?」 「マンション」 「だから何処にあんの?そのマンションは?」 「教えない」 「なんで?」 「だって・・・・・来る気でしょ」 「ダメなの?俺が行っちゃ」 「ダメ」 「なんで?電話番号教えたのに」 「部屋に来て何すんの?」 「なにすんのって・・・・・・何すると思ってんだよ・・・・・お前もしかして俺がお前になんかするって思ってんの?」 「何ってなに?」 「何って・・・・・あれだよ・・・・・何の事だよ、はっきり言えよ」 「何言ってんのかわかんない」 「わかんない・・・・・とか可愛子ぶってんじゃねー」 「ラブホ行く?」 「何?何言ってんの?」 「行くかなぁーって思って」 「何の為に?」 「休憩」 「ばか?あそこは何するとこか分かってんの?ラブホテルって知ってる?」 「知ってる・・・・・sexするんでしょ?でもこの前はやってないけどね」 「お前ふざけてんの?この前は酔ってたから仕方なくあそこへ行ったんだよな」 「そうだけど・・・・・せっかく行ったのに・・・・・・何もしなかったから」 「だからなんだよ・・・・・また行って俺とsexしよってか?」 「うん」 「うんって・・・・・俺の事好きなの?」 「かも」 「かもって・・・・・・フランス人ってそんなに簡単にsexできんの?だれとでも?」 「誰とでもって言ってないじゃん・・・・・こころと行きたいって言ってんの」 「お前さーマンションも教えないって言ったくせにsexはするって言うの?」 「ダメなの?」 「それってさ・・・・・・遊び?」 「遊びって?」 「ただsexしたいだけの遊びかって?」 「・・・・・・違う」 「何が違うんだよ・・・・・俺・・・・・もういいよ」 「こころ・・・・・」 「もうお前には逢わない・・・・・帰る」 「こころ待って・・・・・」 あいつが軽く言ったラブホへ行こうって言う言葉が思った以上に俺には不快だった・・・・・ずっとあいつを探していたのは、恋人になりたいとかsexしたいとかそんな気持ちなんてちっともなかった、ただ友達になりたかった。 確かにあいつは綺麗だし目立つ・・・・・だけどたった一人で日本にいると思ったら何かしてやりたかったし、困ったことがあったら助けてやりたかった。 電話番号を聞いたのもマンションがどこか聞いたのも、友達だと思ったからだ・・・・・それなのに……… まるで俺があいつとsexしたがってるような言い方をされたのが悔しくて悲しかった。 たった2回あっただけなのに信用しろって言う方がおかしいのは分かってる・・・・・ マンションまで走り、部屋に入ってあいつの事は全部忘れることにした。
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