もう逢えないの

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もう逢えないの

ズキズキと痛む頭を持ち上げてうっすらと目を開けた、自分がどこにいるのか・・・・・この場所が何処なのか・・・・・記憶が綺麗さっぱり消えていた。 ベッドを降りてふらつく足で隣の部屋へ行くとソファーに長い足が見えていた‥‥‥部屋の様子からこの場所がラブホだと気が付いた。 と言う事は・・・・・この長い足の男と一緒にラブホ・・・・・ 慌てて自分の身体をまさぐってみるも特に違和感はない・・・・・尻もぺ〇スも・・・・・・無事・・・・??? 無性に腹立たしく、呑気にソファーに寝ている男の側へ行った。 寝ている男を見て一瞬、喉の奥で変な声が出た・・・・・・マネキン・・・・・・恐ろしさに手が震え、それでも確かめずにはいられない・・・・・ そろそろと手を延ばし髪に触れてみた、髪はふわふわと柔らかで少しだけくるくるしていた・・・・・・まるでマネキンにしか見えないその顔にも触れてみた・・・・・ しっとりとした白い顔には長い睫毛と見事な三角形の鼻、唇は柔らかそうなピンク・・・・・・だが、これはれっきとした人間だった。 「あの・・・・・起きて・・・・・・」 「・・・・・  」 「おい・・・・・起きろ」 「・・・・ウイ」 「だれお前・・・・・おい、起きろって」 男はソファーから足を下すと、両手を延ばして伸びをするとジッと俺の顔を見た。 「やぁ~起きたの?気分どう?昨日の事覚えてる?」 にこやかなその表情に思わず見惚れ・・・・・何を言うつもりだったのか、思考が停止する。 「お前、俺をここに連れ込んで何した?」 「私は悪くないよ・・・・・君が酔って座り込んでたからここへ連れて来ただけだし・・・・」 「なんでラブホかってこと」 「だって・・・・・君のうち知らないし、私のホテルには連れて行けないし・・・・・だから・・・・」 「なにもしてない?」 「寝かせただけ・・・・・触っても無い」 「そっか・・・・・ならいいけど・・・・・ありがとう」 「じゃぁ 私帰ります」 「待てよ・・・・・・その前に私って言うのやめてくれる?俺って言ってくれない・・・・・なんかやだ」 「わかった・・・・・俺ホテルに帰る」 「まってよ・・・・・・あのさ観光客?名前教えて」 「アサヒ!」 「あさひ?日本人?どこから来たの?」 「フランス」 「へーフランス人なんだ、日本語うまいね」 「母にならった、母は日本人」 「そうなんだだからなんだ、俺はどっちも日本人」 「ふーん」 「帰っていい?」 「まってって・・・・・ラブホから一人で出るって恥ずかしいだろ」 「男同士で出るのはいいの?」 「マッ そうだけど・・・・・一人よりはいいだろ・・・・・」 「じゃぁ一緒に出よう」 「了解・・・・・・行こっ」 「じゃ 帰るね」 「まって・・・・・朝ご飯ご馳走させてお礼に」 「いいよホテルで食べるし」 「そんなこと言わないで付き合ってよ」 「でも・・・・・君のこと知らないし」 「知らなくてもラブホに来た仲じゃん・・・・・・朝ご飯食べながら自己紹介するからさ、行こっ」 「・・・・・」 二人して近くのファミレスへ入り、向かい合ってよくよく見るとほんとついジッと見てしまうぐらい綺麗だった・・・・・・周りの客も一瞬、視線が行くのがわかった。 そんな俺にあさひが言った。 「君まだ子供だよね、お酒飲んじゃダメでしょ」 「誰が子供だって?」 「きみ」 「よく見ろ、もうとっくに成人してる二十歳(はたちだ)」 俺は学生証を突き付けて言った。 「はたち?」 「そうはたちって20歳ってこと」 「ふーん 見えない」 「お前は幾つなんだよ?」 「わたし・・・・アッ俺は32歳」 「エッ それこそ見えない」 「どうゆう事?」 「もっと若いかと思った」 「歳だって事?」 「そうゆうわけじゃないけど・・・・・若く見えるって、褒めてんの」 「そうありがとう」 「で、何しに来たの?仕事?」 「違う 来てみたかっただけ」 「へ~~一人で?」 「そう」 「じゃぁ 俺が案内するよ」 「いい 一人で大丈夫」 「なんで?」 「君は学生でしょ、学校へ行って」 「へ~~残念でした、今春休みです」 「ふーん、でも結構」 「なんでだよ」 「一人がいい」 「じゃぁ もういいよ   ところで名前なんて言うの?」 「Michel 朝陽(ミシェル あさひ)」 「俺もあさひ・・・・・朝比奈 快(あさひなこころ)」  「こころ!じゃぁ、俺ホテルへ帰る」 「あのさ、もう逢わない?」 「たぶん」 「電話番号教えてよ」 「持ってない」 「じゃぁホテル教えて」 「なんで?」 「逢いたくなったら行くから」 「だめ」 「なんでダメなんだよ、教えろよ」 「いやだ」 「そう もういいよ」 「じゃぁ もうお酒飲んじゃダメだよ」 あいつはそう言うと、振り返らずに店を出て行った。 なんだよ、ラブホに連れ込んだくせに・・・・・・
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