俺と朝陽の関係

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俺と朝陽の関係

朝陽と気持ちが通じ合ってからは、親友みたいにいつも一緒だった。 朝陽はジャズバーでの演奏を週3回からほぼ毎日に変更し、その為に就労ビザを取り、プロとして本格的に仕事を始めることになった。 朝陽の評判は音楽好きはもちろん、これまでジャズに興味のなかった若い層にも人気となった。 朝陽の人気で【BLUE イーグルス】は連日多くの客でにぎわった。 これまでマネジメントをやっていたお兄さんの代わりを探す必要があった。 これまでもこれから先も自由に活動する為に、音楽事務所に所属することは考えていない。 その為なおさら信頼できるマネージャーが欲しかった。 朝陽にとって、信頼できるのはこころだけだった。 マネジメントと言っても、仕事先の場所と時間とギャラの交渉をやってもらう事が主な仕事だった。 朝陽はそれをこころにやってほしいと思っていた。 バーが休みの日は二人で夕食を共にしていた、食事が終わって朝陽が仕事の話を始めた。 「俺、就労ビザも取れたし暫くは日本で活動することに決めたよ」 「マジで!よかった!朝陽が帰ったらどうしようって思ってたんだ」 「でさ・・・・・こころにお願いがあるんだけど・・・・・」 「いいよ、何でも言って」 「俺のマネジメントやってほしい」 「なにそれ?マネジメントって何やるの?」 「仕事のオファーが来たら、俺と一緒にスケジュールとかギャラとか決めてほしい。 俺一人じゃ分からないこともあるし、こころがいてくれれば安心なんだけど」 「俺で出来るならやってもいいけど・・・・・俺でいいの?」 「そんなに難しく考えなくても大丈夫、今の所地方へ行くつもりないし、バーでの仕事が中心だから」 「だったら俺でよければやるよ」 「良かった。授業の邪魔にならない程度でいいから」 「わかった、朝陽の演奏皆に聞いてほしいな」 「こころは俺の一番のファンだね」 「ファンでマネージャーだろ」 「こころがいてくれてよかった」 その日からこころはマネージャーとして、朝陽の仕事になるべくついて行くことにした。 仕事とはいえ朝陽の演奏を毎日聞けることが嬉しかった。 何度聞いても朝陽の演奏はこころの胸を熱くした・・・・・・サックスの独特の音色と重低音を聞くたびに胸が熱くなって全身に痺れが走るような快感を感じていた。 演奏中の朝陽は普段の数倍カッコいい、それでなくても目立ってカッコいいのに、サックスを演奏する朝陽から目が離せないほど素敵だった。 朝陽に沢山のファンができた、朝陽が出てくるだけで歓声が上がり、まるでアイドル並みの人気になっていった。 演奏だけではなくビジュアルもいいとなれば当然マスコミも注目し、朝陽の存在は次第に音楽ファンだけのものではなくなっていった。 朝陽は誰にでも優しくて常に笑顔で対応する、しかも日本語もうまくて取材も難なくこなした。 今では音楽関係の取材だけでなく、ファッション雑誌からのオファーも増えていた。 身長もあって誰が見ても見惚れる程のビジュアルなら、そうなるのは当然のことだった。 今日も朝早くからスタジオでの撮影の仕事だった。音楽とは全く関係ない仕事・・・・・一人だったり女性と見つめ合って微笑んだり、どんなポーズも見る人を魅了した。 でもそれは朝陽の本来の仕事とはかけ離れている、仕事の依頼が増えて何を受けて何を断ればいいのかが曖昧になってきていた。 こころはマネージャーだと言っても素人だ、朝陽も日本のビジネスの事はわかっていない・・・・・・このまま全ての仕事を受けてしまったら、朝陽(あさひ)の演奏家としての仕事にも影響が出ると考えていた。 今朝陽を守れるのは自分だけだ、こころは朝陽の本音を聞きだし、これから先のことを決めようと決心した。 「朝陽、仕事の事で話がある」 「うん」 「今やってる演奏以外の仕事の事どう思ってる?このまま続けるつもり?」 「こころはどう思う?自分でもこのままでいいのか迷ってる」 「俺の意見を言っていいなら、この際はっきり言うけどあくまでも俺の意見だし最後は朝陽が決める事だから、そのつもりで聞いて」 「うん わかった」 「俺としては朝陽には演奏活動を中心にやってほしいと思ってる。あの素晴らしい演奏を多くの人に聞いてほしし、演奏以外の仕事をしてる時間がもったいないと思ってる。 それが朝陽の本来の姿じゃないって気がして・・・・・・勿論、朝陽がポスターの仕事やモデルをやるのも素敵なんだけど………」 「こころの意見、俺が考えてたことと一緒だよ。今のまま演奏以外の仕事をするのはどうなんだろうって考えてたんだ・・・・・だからもう音楽以外の仕事は断るよ、こころがそう伝えてくれる?」 「わかった、朝陽が俺と同じように思っててくれて安心した」 「こころも今の現状心配してたんだね」 「まぁーそうかな、女性と絡む仕事も増えてたし・・・・・そんなの見たくなかっただけかも」 「それってジェラシー?だったら嬉しいな」 「なに?ジェラシーって日本語で言ってくれる?嫉妬って言いたいの?」 「あくまでもジェラシー」 「そう じゃぁ違う・・・・・ジェラシーなんてするか」 「素直じゃないなぁ、拗ねた?」 「どうせ俺は朝陽から見たらガキだし・・・・」 「ガキでも頼りにしてるよ」 朝陽に言われなくてもあれは紛れもなく嫉妬でジェラシーだった。 他の誰とも関わってほしくない、親しくしないでほしいと思ってる自分がいて、そのくせ朝陽の演奏家としての魅力を沢山の人に知ってほしいとゆうのも本音だった。 俺と朝陽の関係は友達でありマネージャ・・・・・・それ以上でもそれ以下でもない。
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