エピローグ 契りの指輪は重なり合って

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エピローグ 契りの指輪は重なり合って

 城の外ではすでに大きな歓声が上がっている。  クベラ国民の誰もが、これからおこなわれる華やかで盛大な行事が待ちきれないようだった。  あと一時間もすると、新たなタイクーンを乗せた四頭立ての儀装馬車が王城を出発し、即位式が執りおこなわれる神殿へとむかう。  ここ数年、クベラ国では不幸が続いていた。二人の皇太子が立て続けに逝去し、そのショックから国の長たるタイクーンも病床に伏していた。  跡継ぎもおらず、タイクーンの病状も悪くなるばかり――そんな暗い雰囲気を打ち消すように、とある一報がもたらされた。  大陸全土に魔物を放ち混乱をもたらす神出鬼没の生ける天災「棘の魔女」を打倒し、ヴァルナ砦を奪還した若き女傑。彼女こそが亡くなったとされていたタイクーンの息女である、と。  暗殺者から命を守るため、生まれて間もなく密かに賢人に預けられ、身分を隠し異国の地で研鑽を積んでいた。  クベラと父王の危機を知り、唯一の世継ぎとしての責を果たすため国へと舞い戻った儚い美貌に果敢な心を秘めた姫。  サヴィトリのあずかり知らぬところでそんなシナリオが出来あがっていた。  よくもまぁそんなデタラメを考えつくな、とサヴィトリは感心するばかりだ。
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