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「じゃあさ、そういうニルニラはどうなんだ? 恋人とか好きな人とか、いないのか?」
自分だけ質問攻めにされるのも不公平なので、サヴィトリはニルニラに矛先をむけた。
「あっ、あたしでございますか!?」
「あ、声うわずった」
「あ、顔赤くなった」
「うるさいのでございます!!」
ニルニラはきんきん声で怒鳴ると、傘で顔を隠してしまった。
「わかりやすいなニルニラは。で、誰? どんな人? 年上年下?」
意趣返しとばかりにサヴィトリはニルニラに詰め寄った。
ユーリスもうんうんとうなずきながらサヴィトリに続く。
「だ、誰だって関係ないのでございます!」
「えー、他人のこと散々聞いておきながら、ニルニラのほうは教えてくれないなんてずるいじゃないか」
サヴィトリがごねると、ニルニラはうっと言葉に詰まった。意外にニルニラはお人好しだ。
「……すごく、嫌な人なのでございます。お節介で、優しくて。あたしのことなんか、なんにも思っていないくせに」
ニルニラは頬を赤らめ、拗ねたように言った。
恋をしている女の子の顔だ。
何度か見たことがある、自分には縁遠いもの。
「乙女ですねー」
「青春だな」
「~~~もうっ! 帰るのでございます!」
ニルニラは足音荒く、村長の家の方にむかってしまった。
「あーあ、行っちゃった」
サヴィトリはユーリスと顔を見合わせ苦笑する。
「ジュースありがとう、ユーリス。また今度来るよ」
サヴィトリは手を振り、急いでニルニラの後を追いかけた。
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