2-7 千客万来

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「……そういう君のほうこそさ、あの三馬鹿のうちのどれかと、付き合っているんじゃあないわけ?」  サヴィトリが原石を手提げの籠に入れていると、おもむろにナーレンダが聞いてきた。 「三馬鹿?」 「そ。変態補佐官カイラシュ、脳筋隊長ヴィクラム、腹黒近衛兵ジェイ」  ナーレンダは端的に三人を言い表した。昔からナーレンダは他人に対して厳しい。 「やだなぁ、何言ってるの。誰とも付き合っていないよ。ナーレも知っていると思うけれど、ジェイは幼なじみだったから以前から面識はあるよ。カイとヴィクラムとは出会ったばかりだ」  サヴィトリは首を振る。  三人とも好ましいと思うが、あくまで友人・知人としてだ。いだく感情に差はない。 「僕はどいつもこいつもおススメしないね」  ナーレンダは腕組みをして言った。なんとなく機嫌が悪そうに見える。 「だから付き合っていないって。それに三人にも悪いよ。ナーレがそんな邪推をしたら、いい迷惑だろう」  三人とも次期タイクーンの護衛として同行してくれているが、もしかしたら王都に恋人や大事な人を残してきているかもしれない。妙な勘繰りをしては失礼だ。 「どんだけ鈍いのさ、君は。まぁ、近衛の腹黒ガキはどうだか知らないけど、あの二人が職務のためだけについて来たとは思えないね」  ナーレンダはまだ納得がいかないようだ。  サヴィトリは首をかしげる他ない。サヴィトリの警護と棘の魔女リュミドラの打倒以外にも、何か理由が必要なのだろうか? 「誰だったらおススメできるんだろうね、僕は」 「ナーレ?」 「あの約束も、反故になりそうで嬉しいかぎりだよ」  ナーレンダはため息混じりに呟き、右手を撫でる仕草をした。ちょうどサヴィトリと対になる場所――右手の中指に、ナーレンダも指輪をはめていた。  指輪を撫でるのはナーレンダの癖の一つだ。なんの時にやるのかは、忘れてしまった。あまり機嫌のよくない時だというのはぼんやりと覚えている。
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