2-7 千客万来

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「ついでにそれも買っておいてやる」  ヴィクラムが原石の入った手提げ籠を持った。ついでと言うからにはヴィクラムも何か買うのだろうが、他に何か持っているように見えない。 「珍しくお優しいじゃないか、ヴィクラム」  ナーレンダは何か含みのある言い方をした。 「俺が言うことでもないが、そろそろその癖はやめたらどうだ。生きづらいだろう」  ナーレンダを一瞥すると、ヴィクラムは喉に手を当てた。  サヴィトリとナーレンダとの付き合いと、カイラシュ・ヴィクラム・ナーレンダの三人の付き合いの長さはそれほど変わらない。サヴィトリの物心のつく前を差し引くと、むしろ三人のほうが互いのことをよく理解している。どんな関係だったのか一度聞いてみたいところだ。 「ふん、余計なお世話」  二十代後半とは思えない悪態をつくと、ナーレンダはヴィクラムの方へと飛び移り、そのまま荷物の中に潜ってしまった。  ヴィクラムは目蓋を伏せ、呆れたように息を吐く。 「あの姿になってから、ナーレはずっと機嫌が悪いな」  ナーレンダに聞こえないよう、サヴィトリはこっそりとヴィクラムに耳打ちをした。 「わからなくもないがな。誰よりも責を感じているのだろう」 「責? なんの?」  サヴィトリの問いに、ヴィクラムは指をさすことで答えた。  ターコイズの指輪。  サヴィトリは反射的に右手で指輪を覆い隠した。元をただせば森を出た自分が悪い。ナーレンダが罪悪感を背負いこむ必要などないのに。
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