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「ご理解いただけたようですね。そう、サヴィトリ様はこのヴァルナ村でわたくしとの甘美でとろけるような婚前旅――」
サヴィトリは物理的にカイラシュを黙らせた。近頃、どの程度の力を入れれば一撃ですませられるか感覚で理解できるようになってしまった自分が悲しい。
「……なんかさ、カイラシュさんの妄想が日増しに――いや、一時間毎に加速してない?」
「ジェイ、ちょっとこれを庭に埋めておいてくれない? 何時間か土に漬けておけば多少まともになるかもしれないし」
「んー、かえって熟成するかもよ?」
「……現状維持で、経過観察が妥当かな」
サヴィトリは気を取り直すように、一息ついてから少し冷めてしまったミートパイを食べた。
「それで、どうする。俺は一人でも構わないが」
酒も肉もあらかた食いつくし、やることがなくなったのか、ヴィクラムが結論をせかしてきた。
「あの、ヴィクラム様のお力を疑うわけではないのですが、できれば皆さんで当たっていただければと。棘の魔女の魔物に感化されたのか、採掘坑には他の魔物も集まってしまっているとの報告もありますし」
村長は媚びへつらうような笑みをその場にいる全員にむけた。
「うーん、おつかいイベントってレベルじゃあなさそうだなぁ。それなら村長さん、こちらからも一つ要求があるんですけど、聞いてもらえます?」
勝手にジェイが交渉をし始めた。
大抵の場合、ジェイに任せておけば間違いはないので、サヴィトリは成り行きを静観する。
「はぁ、村長の権限の範囲内のことでしたら」
「無理難題とか金銀財宝を要求しようってわけじゃないんです。ただ、ヴァルナにあるらしい解呪の泉について何か知っていたら教えてほしいなーって」
「解呪――ああ、『はじまりの泉』のことですね。誰がそんな噂を広めたかは知りませんが、この村にありますよ」
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