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「――ま、ようするにですね、手っ取り早く空白を埋めるにはねっとりと肌を重ね、男女の情愛を深めるのが一番ってことです、はい」
サヴィトリがぼんやり物思いにふけっているうちに、カイラシュはサヴィトリの服を脱がしにかかっていた。
「さ、サヴィトリ様。不肖このカイラシュ、全身を使って誠心誠意ご奉仕いたしますので――」
「あの世で性根を入れ替えてこい!」
サヴィトリはカイラシュの胸倉をつかみ、ひと思いに投げ飛ばした。
ほんの一時でも、ぐらついてしまった自分が情けない。
「つれないですね、サヴィトリ様。ですがそういう素直じゃないところもお慕いしておりますよ」
受け身を取ったカイラシュは微笑み、片目をつむってみせた。
「では、そろそろ失礼いたしますね。体調と美容のためにも、あまり夜更かしはされませぬよう。ですがどうしても寝付けない場合はお呼びください。責任と下心とをもって添い寝させていただきます」
「結構だ!」
サヴィトリは渾身のオーバースローで枕を投げるが、カイラシュがドアに滑りこむほうが早かった。
「おやすみなさい、サヴィトリ様」
完全にドアが閉まるのと、サヴィトリが大きく息を吐いたのはほぼ同時だった。
カイラシュのおかげで完全に目が冴えてしまった。もちろん、カイラシュに添い寝を頼むつもりは微塵もない。
(……とりあえずトイレ行こ)
サヴィトリは乱れた髪を手ぐしで整え、部屋を出た。
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