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「お、おもたく、ないですか…?」
「いや逆に心配になるぐらい軽いんだけど」
「そ、んなわけは……膝の上に大人が乗ったら普通に重いと、思います」
樋浦の上に跨るような恰好で膝の上に乗せられたから、正直気が気じゃない。戸惑うばかりの挙動不審な私がどうすべきか固まっていると、樋浦がそっと頬を撫でた。
澄ちゃん、と耳元で樋浦の声が舞う。
どこか甘ったるく掠れたその声は甚く煽情的で。
「キスしていい?出来ればエロいの」
頬から伝った樋浦の指先が唇の淵をなぞり、私を甘く誘惑する。不埒なぐらいの色香に抗う術など知る由もない私は、くらくらと眩暈を覚えながらこくりと顎を引いた。
樋浦さんにだったら、私ね。
どんな風に扱われてもいいって思ってるんです。
「なんだそれ、馬鹿じゃねえの」
呆れたように吐き捨てた樋浦が少し乱暴に私の顎を掬った。不敵に持ち上がった柳眉と、剣呑に歪む瞳。どくりと心臓がおかしな脈を打って、酷く狼狽えてしまう。
「男のこと調子に乗せんなって教えたろ?お前は常に堂々としてりゃいい」
「で、も、ひ、うらさんに、きらわれたら…」
「死んでも嫌わねえよ」
噛み付くように、唇を奪われた。
怖いくらい男の人の顔をした樋浦に背筋が騒ぐ。
樋浦の首筋にしがみつくようにそろそろと腕を回し、固く目を瞑った。微かな吐息がこぼれる音がどこか淫靡に思えて体が竦む。口蓋を割るようにねっとりと侵攻する舌先に翻弄されながら、頭がぼーっとした。
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