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「ひ、うらさん、あの…」
「恥ずかしがってんのも可愛いんだけどさ」
もうちょっと触れたいかな、なんて。
甘えながら私を引き寄せる力に殉じるしかない。
伸びっぱなしの髪を適当に掻き上げてクリップで留めているおかげで露わになった首筋に、樋浦がちゅっと淡く唇を落とすから、なんだかくらくらしてくる。
「ほんと肌白いよな、澄ちゃん」
「え?あ、そ、うですね、わりと……」
「髪も真っ黒なのになんでエロく見えんだろ?」
泣きボクロかな?と今度は右側の目尻に口付ける樋浦は、つぅ、と耳元まで舌を這わせる。遊び慣れてそうだとか散々言われた容姿に、もちろん自信なんてなくて。
「あ、の、やな、とこ、ないですか…?」
「ん?嫌なとこってなんの?」
「え、っと、わたしの、見た目……人からあまりよく思われない、ので……髪を切るとか、お化粧変えるとかなら──」
馬鹿じゃねえの、とまた遮られる。
樋浦は珍しく少し怒ったような顔で私を睨んだ。
「こんな最高傑作、どこ変える気だよ」
アホか、と居丈高に鼻を鳴らす樋浦はどこか大人げなく見えて、ぽたりと涙が落ちた。好きな人にそのままでいいよって言ってもらえることが、こんなにも心強いことだったんだって、それも全部樋浦が教えてくれた。
「どんな見た目でも俺にとって澄ちゃんは世界一可愛いんだから、十分だろ」
「…ひ、うらさ、ん、だいすきです」
「安心しろよ、多分俺のが全然好きだから」
樋浦は私のことを喜ばせる天才だ。
いつか幸せすぎて死んでしまうかもしれない。
ぎゅっと目一杯樋浦の首筋にしがみつく私の髪に樋浦がキスをして、抱き締め返してくれる。湯の中で触れ合う体の境目が、ゆらゆらと溶けてなくなってしまいそうで。
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