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「ひ、うらさ、─んんっ、あぁ」
「…まじですげえエロい顔すんな、お前」
「へん、な、顔、してますか…?」
「ん?まあ確かに他の野郎には見せれねえかな」
「……げんめつ、しまし、た、か?」
「するわけねえだろ」
余計なことばっか考えてんなよ、と呆れたように呟いた樋浦が私の言葉を遮るみたいに少し乱暴なキスをした。口の中を甘く荒らす舌先に乱されながら、ふと自分のナカに滑り込んできた樋浦の指先に責められて。
幸いなことに痛みはなかった。
代わりに、壊れてしまいそうな恍惚があって。
「このまま最後までする?」
最後までというのが何を指すのかわからないほどには、私もウブじゃない。気遣うように私を見下ろしている樋浦の綺麗な茶色の瞳。それを怖がる必要なんかない。
あのね、さっき怒られたけど。
でも本当に貴方にだったら何をされてもいいの。
「まじで無垢なお嬢様おそろしいな」
苦笑いみたいに目元を緩めながら私を抱き締める樋浦の熱に、満たされる。窓の外に降る雪はまだ止む気配を見せない。体の中心をメキメキと裂かれるような破瓜の痛みさえも、いとおしく思えて涙が出た。
枕元にぽつねんと灯った黄色いヘッドライトの光に照らされて、樋浦の横顔に影が落ちる。どこか余裕をなくしたように些かばかり呼気を荒くする樋浦の眉間に寄った皺が、何故か酷く嬉しくて。
真っ白な寝室の壁紙に映し出される重なり合ったふたりのシルエット。ふたり分の影がひとつに融解して、夜のカンバスに描かれる。その優しい景色を私はきっと死ぬまで忘れることなく、額縁に入れて心に飾るだろう。
深々と降る雪もいつかは解けて。
その先に訪れる季節には、優しい風が吹くから。
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