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昼休憩。
早速凪と雫の周りにはクラスメイトが集まっていた。
「雫ちゃん超可愛い!
抱きしめていい?」
「川崎さんも綺麗だよね!
モデルとかやってそう!」
「いやいや私なんかそんな…。」
こう言う場面に慣れて居ないからか凪は相当テンパっている様子だ。
前に合宿に参加した時とは人数も状況も違うし当然と言えば当然な訳だが。
「子供扱いするななの!
私はもうジャ〇コなの!」
「それを言うならJkな、、」
なんだよそのガキ大将の妹宣言は、、。
「キャー!やっぱり可愛い!!」
しかも逆に好感度上げてしまってるジャマイカ。
それにしても…。
「あれ?そう言えば茜の姿が見えないな。」
「茜っちなら昼休憩になってそうそうに教室を出て行ったよ〜?」
それに木葉が答える。
うーん、あいつらしい。
ならもしかしてあそこにいるかも。
そう思い俺は真っ直ぐに屋上へと足を運んだ。
すると思った通り茜は屋上のベンチに腰掛け一人空を眺めていた。
「何やってんだよ?」
「あら…休憩時間にわざわざ一人でこんな場所に来るなんて…寂しい人ね。」
「お前にだけは言われたくねぇよ…。」
「あぁ…なんとかと煙は高い所が好きと言う言葉もある物ね…。」
「その理屈でいくとお前もバカって事になるぞ…?」
「あら…私はバカだなんて一言も言ってないのだけれど…自分がバカだと言う自覚でもあるのかしら…。」
コイツ嫌い!
「じゃあそのなんとかはなんだって言うんだよ?」
「さぁ?」
なにも考えてなかったんじゃないか、、
「まぁもっとも、私は煙のような物なのかもしれないわ。」
「どう言う意味だよ?」
「あなたの周りにはいつだって人がいる。
暑苦しいあなたの周りに人が集まるのは、キャンプファイヤーに似ているわね。」
「皮肉にしか聞こえねぇよ…。」
「えぇ、皮肉だもの。」
「こいつ…。」
「私はあなたのように炎を生み出す事も、それに自分から近付く事もしなかった。
ただ煙になって人知れず遠くに流れていくだけ。」
「炎の巫女なのにな…。」
「あら、あなた程度の知能に例え話は難しかったかしら…?」
「冗談だっつの…。
ってもお前も声くらいかけられたんじゃないのかよ?」
「えぇ、とても遺憾な事よ。」
「要は絡まれすぎて怖くなったから逃げてきたのか…。」
「勝手に変な解釈をしないでもらえるかしら…。
私には馴染めない空気だから距離を置いただけよ。」
「言い訳がまんまコミュ障ぼっちのそれじやゃねぇか…。」
「そんな物と一緒にしないでもらえるかしら…。
それに休憩時間にこんな所にわざわざ一人で来ているあなたに言われたくないのだけれど…。」
「別に来たくて一人で来た訳じゃねぇよ…。」
「えぇそうね…。
一人で寂しくて行く宛ても無いからここに来たのね…。
随分と寂しい人生なのね…。」
「だー!違うっつの!お前を探しに来たんだっつの!」
「そう…。」
そこで茜は小さくため息を吐く。
「あなたはいつも私をほうっておいてはくれないのね。」
「おう、仲間だからな。」
「私は別にあなたのようなぼっちではないのだけれど…。」
「そう言う意味での仲間じゃねぇよ!?」
「あなたはいつもどんなに敵に回ってもそう言って聞かなかったわね。
こうして探してまで私に会いに来る事を選んだ。」
「探したら探したで殺されかけてたのにな…。」
「あなたがそもそも探そうとしなければ、必要以上に私と深く関わろうとしなければ、そもそも敵になる必要もなかった。
それともあなたは自分から殺されに来たのかしら…。」
「バカ言え、俺だって死ぬのは怖いし自分を犠牲にしてまで自分を生き返らせようとしてくれる存在がいてくれる事も分かった。」
「そうだったわね。
あなたは臆病な癖に自分から戦う事を選んだ。
それで死にかけても変わらずに。」
「あぁ、そうする事を俺は自分の意思で選んだんだ。
それを後悔なんてしない。」
「私はあなたのように選ぶ事なんて出来なかったし、選択肢すら与えられなかった。」
そう言って茜は空を見上げて目を細める。
「でも今は違うだろ?」
「どうかしらね。
どこかの誰かさんにこれまで散々振り回されてきたのだけれど。」
「はん、俺だって散々皮肉を言われたっつの。」
「あら、私は事実を述べてきただけよ…。」
「あぁそうかよ…。
でも俺にとってはさ、なんだかんだそうやって選んで掴んだ時間が大事だったんだと思う。」
正直大変な事ばかりだった。
今まで普通の高校生だった俺が茜と出会い、力を手に入れ、運動だって体育の授業でぐらいしかしてこなかった俺が刀を持って化け物と戦ったりもした。
死にかけた事も殺されかけた事も顔を見る度に罵倒された事も。
あれ……?思い返してみたら結構散々じゃね…?
「そんな時間でさえ大事だと思えるなんて…不憫ね…。」
「同情やめろw
…で、お前はどうなんだよ?」
「散々ね。」
「即答すんなやw」
「あ、こんな所に居た!」
そう言って屋上のドアを開けたのは木葉だ。
後ろには凪、雫、千里もいる。
「あら、バカと煙は高い所が好きなのだそうよ…。」
「結局バカって言ってんじゃねぇか…。」
「そうじゃないとも言ってないわ…。」
「屁理屈を…。
それより木葉。
お前何を企んでるんだよ? 」
「え〜?知りたい?ねぇねぇ知りたい?」
「じゃあ知らんで良い。」
「ちょw冗談だってばw
キリキリはさ、このまま終わりで良いって思ってる?」
「それは…。」
正直思ってない。
実際、茜達にとってで言うなら雨幻の力で自殺したと言う事実を無かった事にする事が一番の解決になるのだろう。
当然成功するか否かと言うリスクもある訳だが。
でもそうすればこれまで俺達が積み上げた大事な時間も同時に無かった事になってしまう。
理屈でそれが一番だと分かっていても感情で納得出来ない程の時間と関わりが俺達には確かにあったんだ。
「私は嫌だよ。
このまま全部無かった事になるなんて絶対嫌。
きっとゼロになんてさせない。
残せる物だってきっとある。
だからさ、絶対に忘れられないような思い出、今から作ろうよ。」
「だからこいつらを学校に?」
「正直さ、まだ怖いんだ。
自分の過去と向き合う事が。」
俺の質問の答えとばかりにそう弱々しく呟くのは凪だ。
「今回の事をきっかけにさ、やり直してみたいなとは思ったんだ。
今まで死神神社の巫女として生きてきていつか消えてなくなるような人生じゃなくてちゃんと一人の普通の人間として、自分の人生を生きたいなって思った。
でもそう思ってみても自殺したいって思っちゃうような人生をまたやり直して上手くいくかどうか不安だし怖いし…。
そんな時に木葉が提案してくれたんだ。
それならせっかくだからさ私達と一緒に学校行ってみない?って。
練習にもなるかもだしさ、一緒に思い出作りたいじゃん。ってさ。」
「そうか。」
まぁ当然と言えば当然だろう。
茜も、凪も雫も一度全てが嫌になって自らの命を奪ったからこそ今ここに居るのだ。
しかも凪と雫は自分が何故自殺したのかも分かっていない。
だからこそやり直してもまた同じ未来を辿る可能性もある。
そうなればもう後がない。
それこそ俺達がしてきた事は、積み上げて来た時間は全て無駄になってしまう。
そんなの絶対認められる訳ない。
「やるか。」
俺は改めて決意を固める。
これが多分俺達が乗り越えなければいけない最後の試練だと思うから。
「俺達で最高の時間を作ろうぜ。
それこそ過去が変わっても忘れられないぐらいとびっきりのやつをさ!」
「そうだね、そうしよう。」
木葉も嬉しそうに笑う。
こうして俺達にとって最後の時間が始まった。
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