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「優亜は私のことが一番好きなはずなのに、なんだかんだ言って一番仲が良いのは三島くんなんだもん」
「ちょちょ、ちょっと待って」
瞳への愛がダダ漏れしていた。そう思うと恥ずかしすぎる。でもそれ以上に文太との関係を勘違いされているほうが納得いかない。
その時。フワッとあたしの肩に腕が置かれた。目の端にさらさらの黒髪。柔らかな石鹸の香りが鼻腔をくすぐり心臓がとびはねる。ただ納得がいかないのは瞳のもう片方の腕が文太の肩にも置かれていたこと。
「私、高校は芸能活動ができるところに行っちゃうと思うけど。これからもよろしくね。ふたりとも」
瞳の言葉にハッと夢から醒めたような心地になって思わず文句をいってしまう。
「あたしはもちろんこれからも瞳とずっと仲良くしたい。たとえ違う高校いっても絶対! でもなんで文太にもよろしくなの?!」
恨みがましくそう瞳に問いかけると瞳は楽しそうに笑った。
「だって私の好きなコを三島くんも好きだから。それって仲間ってことだよね」
「へ?! 」
瞳を挟んで反対側にいる文太を見たら、ほんの少し頬を赤くして俯いている。
「何言ってんだよ。ほら、か、帰るぞ」
そうぶっきらぼうに呟いて瞳の腕を払うようにして駅の方に歩き出したから。あたしと瞳は顔を見合わせてしまう。瞳がくすくす笑い出したからつられてよく分からないけど笑ってしまう。
それから思い切ってあたしから瞳に手を差し出す。瞳は一瞬びっくりしたように動きを止めた。でもそうっと私の手を握ってくれたから。ぎゅっと握り返す。そうして足だけは早い文太の背中を追いかけるように二人で走り出す。握りしめた瞳の手のひらはほんのり温かかった。
了
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