22人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「田口先輩をどう思うかってこと?」
瞳はあたしの方なんてろくすっぽみずに、どこか遠くをみながら呟いた。心がどこか遠くにある。そんな感じ。それがあたしをもどかしくさせるのに、心臓が軽く痺れてときめいてしまう。瞳のクールな感じがかっこいい。好き。そんな心のうちなんかみせないように注意ぶかく頷く。
「 先月の卒業式のときに告白されたって聞いたから。どうなったのかなあって」
「ああ、その話」
あたしの問いかけに一瞬間を置いて瞳はこちらに視線を向けた。瞳は目がとても大きい。だから瞳って名前を彼女の両親がつけたんだろうなっていつも思う。なんの躊躇いもなくその大きな目でまっすぐに見つめられると眩しいものでもみたようについ、視線を逸らしてしまう。
あたしたちは校庭の隅っこにある花壇の縁に座っている。隣でくすりと笑う気配。それからうーん、と唸ったあとにさらっという。
「中学生なんて子供っぽくて無理だし」
顔をあげるとどこか大人びた横顔でそう言って笑う瞳がいる。自分だって中学生でしょとツッコミをいれて一緒に笑う。
彼女が下級生から人気絶大だった田口先輩から卒業式の日に告白されたという噂。探りをいれてみたのだけれど相手にもしていなかったみたい。ホッとしているのが顔にでていたのか、瞳はちらりとあたしを見て口元をひゅんと緩めて笑った。
「優亜はあの先輩のこと、すきだったの?」
最初のコメントを投稿しよう!