運命のひと

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「明日で付き合い始めて一周年ね」 「二人が初めて会ったあの店でお祝いしような」 「ケンちゃんがあたしをナンパした店、ね」 リカはいたずらっぽく笑った。 「リカが俺を冷たく拒絶した店、な」 ケンジもやり返す。 「あれっきりもう二度と会わない人のはずだったのに」 「帰りの電車が一緒になってな」 「あたしのあとをつけてきたのかと思ってドン引きしたよ」 「俺たち二年ぐらい同じ電車使ってたのにそれまで一度も会わなかったんだな」 「あたしの降りる駅が近づいてもケンちゃんずっと降りないから、家までつけてくる気なんじゃないかって怖かったんだから。でもそしたらひとつ前で先に降りて」 「けどその日の夜中に駅と駅のちょうど真ん中にあるコンビニでまた会って」 「こんなことあるのかなって、運命感じちゃったよね」  もともとお互いに見た目も好みで、ナンパを断ったけれどリカは嫌な気はしていなかったのだ。ただ、ナンパにホイホイついていくわけにはいかない。ケンジもあまりしつこいとますます避けられるのを何度ものナンパ経験上知っているので深追いはしない。 もし学校や職場で出会っていたら普通に交際に至っていたであろう二人が、出会い方次第で二度と会わなかったかもしれない。運命ってあるんだな、よくも悪くも、と二人はいつも話していた。    記念日の待ち合わせは19時。 ケンジが店に向かっていると、リカから仕事で少し遅れると電話が入った。 「そうか。先に入って待ってるよ。着く時間わかったらまた電話して」 『ごめんね。1時間ぐらいはかかりそう』
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