20人が本棚に入れています
本棚に追加
黙ってしまった私に、君は何を思ったのだろう。
「その白衣、よく似合ってるよ」
そう言われて、私は苦笑した。
「そうか?」
「うん。だからあんたは、やっぱりお医者様でいいんだよ、きっと」
「……そうか」
君の優しさが、嬉しかった。
君がそう言うのなら、この純白の衣を纏い続けるのもいいだろうとさえ感じた。
だが、今になって私は思う。
この手で一体、私は何を救おうとしていたのか。
何が救いたかったのか。
そして、何が……救えたのか、と。
救えたものなど、何一つない。
人を救うはずだった、この医者の手で私がしたことは、ただ重い罪を重ねることだけだった――。
それから私たちはよく会うようになって、いつしか親友のようになったね。
いや……私は本当に、君のことを心から親友だと思っていたよ。
でも、君はどうだったのかな。君にとって私は……少しばかり裕福な、便利な知人の一人に過ぎなかったのかもしれないけれど……君にとっても私は親友であったと、そう信じることを赦して欲しい。
叔父の目を盗んでこっそり家を抜け出して……私たちはよく日が暮れるまで一緒にいたね。僅かな菓子やパン、果物などを持ってたずねてゆくと、君はとても嬉しそうに、本当に無邪気にはしゃいでいた。
私は君と一緒に食べたかったのに、君はいつも曖昧に微笑みながらそれを拒んだね。
「小さいやつらにも、食べさせてあげたい」
君が弟妹思いなのは知っていたけれど、私はなんだかひどく寂しい気分になったものだよ。
最初のコメントを投稿しよう!