紅 闇

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 黙ってしまった私に、君は何を思ったのだろう。 「その白衣、よく似合ってるよ」  そう言われて、私は苦笑した。 「そうか?」 「うん。だからあんたは、やっぱりお医者様でいいんだよ、きっと」 「……そうか」  君の優しさが、嬉しかった。  君がそう言うのなら、この純白の衣を纏い続けるのもいいだろうとさえ感じた。  だが、今になって私は思う。  この手で一体、私は何を救おうとしていたのか。  何が救いたかったのか。  そして、何が……救えたのか、と。  救えたものなど、何一つない。  人を救うはずだった、この医者の手で私がしたことは、ただ重い罪を重ねることだけだった――。  それから私たちはよく会うようになって、いつしか親友のようになったね。  いや……私は本当に、君のことを心から親友だと思っていたよ。  でも、君はどうだったのかな。君にとって私は……少しばかり裕福な、便利な知人の一人に過ぎなかったのかもしれないけれど……君にとっても私は親友であったと、そう信じることを赦して欲しい。  叔父の目を盗んでこっそり家を抜け出して……私たちはよく日が暮れるまで一緒にいたね。僅かな菓子やパン、果物などを持ってたずねてゆくと、君はとても嬉しそうに、本当に無邪気にはしゃいでいた。  私は君と一緒に食べたかったのに、君はいつも曖昧に微笑みながらそれを拒んだね。 「小さいやつらにも、食べさせてあげたい」  君が弟妹思いなのは知っていたけれど、私はなんだかひどく寂しい気分になったものだよ。
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