眠れない夜に、君と。

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ほろ酔い気分で一人暮らしのアパートに帰宅し、シャワーを浴びる。とくに見たいテレビもなかったのでベッドの上でSNSのリールを流し見して、頭を枕につけた瞬間思い出した。 そうや、おやすみの連絡せんと。 メッセージアプリの莉央のアカウントを開く。 一言目に「おやすみ」のメッセージを入力して送信した。 なんのバイトしてんのかな、と気になった。コンビニ?ファミレス?水商売って感じちゃうし。今度会ったら聞いてみようと思った。そう言えばデート・・・と呼ぶのはまだ自分の中で違和感があるが、考えとくと言っていた。どんなデートになるんやろな、と思いながら電気を消し、目を閉じた。 莉央から『デートしよ』と連絡があったのは2日後だった。 桜木町駅で待ち合わせ、と言われたのでなんとなく予想はついたが、横浜デートしたい、とのこと。 駅の改札を出ると、目の前に莉央の姿があった。 「おはよ」 「・・・おはよ」 ホッとした顔をする莉央。 「・・・来ないかと思った」 「なんで?約束やし、来るよ」 「うん、そうやんね・・・」 莉央はたぶん身長が165センチくらい。服はTシャツにパーカーで、大きな目と丸い頬、サクランボみたいな唇、と「ちょっとボーイッシュな女の子」のように見えた。袖もちょっと萌え袖気味になっている。 「今日、暑いな」 「うん、長袖失敗したかも」 「それ脱ぐと下、半袖?」 「うん」 「じゃ、ちょうどええんちゃう?」 「いりやんはセットアップ似合ってる」 「ああ、セットアップ、楽やねん。組み合わせ考えなくて済むやん」 「ああ、そうやね」 言った直後に後悔した。一応初デートなのに、「楽」な服装で来たことを堂々と。口元を押さえて小さくため息をついた。他でもない、自分に。 「ねえ、あれ乗りたい」 「ん?」 莉央が指さす方向を見ると、ロープウェイがあった。 「ああ・・・」 「高いところ、平気?」 「うん」 「乗ったことある?」 「うん」 去年、元カノと、というのは黙っておいた。 「うわ、高」 料金表を見て莉央が顔を顰めた。 「やめよ。歩いて行こ」 「なんで。乗ろ」 掴まれた腕をそのまま掴み返して、チケット売り場へ向かう階段を上った。 とりあえず片道でええやろ、と2枚買う。ほい、とチケットを渡すと莉央の表情は変わらんかったけど目がちょっと輝いた気がした。 「わ、けっこう揺れる」 「ああ、今地震きたらけっこう怖いかもな」 「え、ちょ、なんでそんなこと今言うん!?」 あ、怒った。 「ちょ、隣座らして。あ、バランス崩して傾くとか無いやんな?」 「大丈夫ちゃう?知らんけど」 「なんで知らんの!乗ったことある言うたやん!」 「いや、経験として、ある言うただけで、知識として何かあるわけちゃうわ」 「えー、もう、怖い・・・」 「なんや、そのへっぴり腰」 そろりそろりと隣に移動してくる莉央の姿を見て、ついハハハと笑ったら、キッとこちらを睨んできた。 無事に隣にポスン、と座ったが、なんとなくフーフー呼吸が荒い。この場合、どっちも「彼氏」なのかは不明だが、恋人として手でも握ってやった方がいいのか、と疑問が浮かんだ。 「ねえ、なんか話して。気分紛らわしたい」 「話?んー、そうやなあ」 「怖い話とか、乗り物系の話以外ね」 「あ、バイトって何してんの?」 「え?」 「この前。あの後バイトやったんやろ?なんのバイトしとんかなって」 「・・・ああ」 一呼吸置いて、莉央が答えた。 「添い寝」 「ソイネ?」 「出張添い寝サービス」 「・・・」 シュッチョウソイネサービス? 頭の中がクエスチョンマークで埋まる。 「なにそれって顔してる」 「うん、なにそれって思ってる」 「そのまんま。お客さんの家行って、添い寝する。で、朝出ていくの」 「それって、、」 「やらしい仕事ちゃうから」
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